走ることが楽しくなる空冷フォルクスワーゲン|1975 フォルクスワーゲン・タイプ 1 ・スポルトマチック

のんびり・ゆったり走っているイメージが強い空冷フォルクスワーゲンだが、しっかりとメンテナンスされた個体は、走ること自体を楽しむこともできる。今回は「FLAT4」にて製作されたニュープロジェクトカーを「箱根」へ持ち込んだ。

タイプ2に「SLOW MOVING VEHICLE」というステッカーを貼っているのを見かけたことがあるだろうか。これはドライバーの「ゆっくり走っています」という意思表示のひとつ。半世紀以上前の車両を労わりながら、“あせらず・気張らず”目的地に向かってのんびりと走っているという意味だ。

もっとも、ゆっくり走っているからといって、空冷フォルクスワーゲンが走ることを“積極的に楽しめない”ということではない。半世紀以上も前に生産されたモデルであっても、空冷フォルクスワーゲンは十分に“楽しく走れるクルマ”だ。

ちなみに“楽しく走る=速度を出す”ということではない。むしろ、楽しく走りたいならエンジンの出力を高めるよりも、ハンドリングやブレーキのメンテナンスに気を遣ったほうがいい。

1975年式はフロントバンパー内にフラッシャーが備わるが、“ROYAL BEETLE” ではフェンダー上にフラッシャーを移設し、個性的なルックスとしている。

ヴィンテージモデルの中には摩耗によりキングピンが緩くなってしまっている個体もある。まっすぐ走っている時にハンドルがふらついてしまう場合は、足まわりをオーバーホールするだけで見違えるようになる。

ステアリングがシャキッとすると、走るのがより一層楽しくなる。気持ちよく曲がるクルマは、真っ直ぐ走っても気持ちがいいから不思議だ。

つまり、速度やパワーは“気持ちよく走る”ということとじつはあまり関係ないのだ。

「FLAT4」エアコンキットもインストール。アイドルアップキットも取り付けられており、エアコン作動時の不安定さも解消されている。

ここで紹介する車両は、「FLAT4」がデモカーとして製作した1975年式のタイプ1だ。

同社が1980年代に製作した「ROYAL BEETLE」を復刻させたニュープロジェクトカーであり、足まわりはもちろん、車両全体にしっかりと手が入れられている。

エンジンは最高出力48馬力を発揮する1600ccデュアルポート。デラックスモデルは1976年式からフューエルインジェクションとなるため、写真の1975年式は最後のキャブレターモデルといえる。

また、アイドルアップキットを装着することでエアコン使用時の安定感も高めるなど、日常使用でも快適な仕様に仕立てられているのが特徴だ。

さらにトランスミッションはクラッチペダルレスの4速スポルトマチック。AT限定免許でも運転可能で、走り出してしまえばクラッチ操作も不要。運転中はステアリングとシフト操作に集中できる1台となっている。

インテリアはいかにもスポーティなイメージとなるダークレッドのニューマテリアルでリフレッシュ済み。ハイバックのシートはスポーツドライブでもしっかりと体をホールドしてくれる。

今回はこのタイプ1 を箱根へ持ち込んで撮影、総延長約16kmの「箱根ターンパイク」を一気に駆け上がった。標高1015mの大観山まで、道路は制限速度50km/h。車体を傾け、タイヤを鳴らしながら走るようなことはないけれど、それでも制限速度を遵守しながら、流れていく景色を楽しみつつ、峠道をしっかりと楽しめる。

自分がコントロールできる速度域下で楽しく走れるのは、エンジンだけでなく、ハンドリングやブレーキなどにも手を抜かずに整備されているから。しっかりメンテナンスされた空冷フォルクスワーゲンは、どこを“走っても気持ちいい”のである。

「FLAT4」エアコンキットもインストール。アイドルアップキットも取り付けられており、エアコン作動時の不安定さも解消されている。オリジナルの1600ccデュアルポートエンジンは「FLAT4」にてメンテナンス済み。


プロショップが教える楽しく走るコツ
「楽しく走る」にはクルマに不安要素がないことがまず第一です。その為にも「走る」「曲がる」「止まる」の基本整備が重要。古いクルマだからとはいえ「出先の途中で止まったりしないかな?」なんて不安を持って出掛けるなんて最悪ですよね。
そして自分の思った様に安心して「曲がれる」「止まれる」が基本なのです。勿論、明るいヘッドライトを含めた灯火類の確認も必要ですし、発電機等の電気系も出先ではトラブルを起こしたくないですよね。
エンジン音や、ステアリングの感覚を覚える事も大切で、「あれ、いつもと違うな」に気づいてあげる事も整備の基本。まずはしっかりしたプロの整備を受け、愛車を知って安心してドライブに出られる事が「楽しむ」に繋がるはずです。(FLAT4代表 藤田さん)

CONTACT|FLAT4
WEB|https://www.flat4.co.jp
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2021
SOURCE|Cal Vol.38


関連記事

AD

ページ上部へ戻る