レザーアーティスト本池秀夫さんのガレージと愛車|VINTAGE LIFE

LEATHERARTS & CRAFTS MOTO

世界的な革工芸作家として文部科学大臣賞も授与した本池秀夫さん。今回はそんな本池さんのレザーアーティストとは異なる、もうひとつの側面、ヴィンテージ・ハーレーやオールド・メルセデスなどを乗り継いできたひとりのカーガイとして、その愛車やガレージを紹介していこう。

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▲2台のヴィンテージハーレーが収まるガレージ。いずれもエピソードのある個体だ

本池秀夫さんは革を素材に人形や動物などをテーマにしたアート作品を制作する世界的にもよく知られたレザーアーティストだ。

若い頃にイタリアの磁器人形作家ジュセッペ・カッペや、アメリカの国民的画家であるノーマン・ロックウェルに惹かれ、その後独自の表現方法である革人形へと辿り着いた。

2021年3月31日にオープンした本池美術館には、革で製作された精巧な等身大の動物や、今にも動き出しそうな表情を魅せる革人形など百以上の作品が展示されており、見るものを圧倒するほどの存在感を放っている。

これらの作品はどれも食肉用に育てられた牛の革を材料としており、本来は廃棄されるものを丁寧に鞣して新たな命を吹き込むなど、制作工程からも独自の哲学が伺える。

その本池美術館の正面にちいさなガレージがあることに気づく人は少ない。外壁は古い枕木で囲まれており、同じ枕木で作られた壁に溶け込むように佇んでいるからだ。手動のドアを開けると内部にはヴィンテージのハーレーとメルセデスベンツが収まっており、本池さんの愛する、もうひとつの世界が現れる。

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▲枕木を立ててこしらえた外壁を活用し、L字型の角部に同じ枕木で残り2面を加えたというガレージ。躯体そのものは本池さん自身のDIYだ。

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▲ガレージの内部。クルマ1台とバイク2台が収納できる。

70年以上も前のヴィンテージを乗りこなす
本池秀夫さんの愛するもうひとつの世界

現在は1948年製のパンヘッドと1941年製のアーミーナックルをガレージに収納しているが、いずれも70年以上前のヴィンテージモデル。

パンヘッド(右)はアメリカ西海岸で30年近くも納屋に放置されていたというバーン・ファウンド(Barn Found)。アーミーナックル(左)はいわゆるミリタリーモデルで、こちらも真珠湾攻撃で使用され、その後奇跡的に見つかったという個体だ。

ガレージには他にメルセデスベンツ・280SEクーペが収まっており、クルマを入れる時はバイクを壁沿いに縦列駐車する。

2台乗り継いているというSEクーペはアラン・ドロンが主演した映画『冒険者たち』に登場した劇中車に感化されて手に入れたもの。スクリーン上ではコンバーチブルが活躍するが、本池さんはエレガントな佇まいのクーペに魅入られた。

今も日常の足としてこれらの二輪・四輪を活用する本池さんだが、驚くことにこれらの愛車が収まるガレージもDIYでこしらえたものだという。

元々、枕木を立てて作った外壁があり、角のL字部分を活用して残りの2面を足したのが現在のガレージ。屋根を架ける際に構造材として重量鉄骨を内部に取り込んで、ドアをつけて完成させたそうだ。

内部には古い看板や照明が設置されており、愛車の雰囲気ともよく似合っている。他の誰もが真似をすることのできない、唯一無二の作品づくりに没頭する傍ら、半世紀以上も前の愛車に乗り込んで海岸線を颯爽と走る本池さん。

人生に乗る最後のクルマはポルシェ356スピードスターと決めているそうだが、「まだまだ、あのクルマに乗るには若すぎる。もう少し歳を重ねないと似合わないな」と、満面の笑みを湛えながら教えてくれた。

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▲知人の医者から譲り受けたという280SEクーペは3.5リッターモデルからの乗り換えた2台目。

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▲日常の足として使用しているという280SEクーペ。かつては東京から鳥取まで自走して帰ったこともあったという。

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▲280SEクーペの美しいインテリアがしっかりと維持されている。

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▲本池さんの三人の息子さんもまたそれぞれがアーティストとして活躍している。写真は三男の本池良太さん。現在鳥取に在住しており、1993年式のジープ・チェロキーを所有。

OWNER_HIDEO MOTOIKE
世界的に知られるレザーアーティスト。1971年にオーダーメイド中心のレザーブランド、「LEATHERARTS & CRAFTS MOTO」を創業して現在に至る。ハーレーとの出会いは幼少期。生まれ育った鳥取で進駐軍が乗るミリタリーモデルが土煙をあげて走り去るのを、毎日のように眺めていたそうだ。

CONTACT|LEATHERARTS & CRAFTS MOTO
WEB|https://www.motostyle.jp
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2023
SOURCE|Cal Vol.52

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