タンタラスの山中に佇む1950年代のリトリートハウス|Tantalus, Oahu

タンタラスの山中に佇む1950年代のリトリートハウス

オアフ島で生まれ育ち、不動産業を営みながらミュージシャンとしても活躍した父と、フリーランスのカメラマンという母の間に生まれたジンジャー。現在はインテリア・デザイナーとして活躍。休日にはハイキングやキャンプをしたりするアウトドア派でもある彼女の家は、タンタラスの山中に佇む1950年代のリトリートハウスだ。

タンタラスの山中に佇む1950年代のリトリートハウス

タンタラスの山中に佇む家は、まさにリトリートハウス=隠れ家という言葉が相応しい山荘だ。

ホノルルの市街地からクルマで約20分。太平洋戦争の戦没者たちが眠るパンチボウルの東側にタンタラス・ドライブの起点がある。コオラウ山脈の山並みを縫う様に走るこの道は、右へ左とコーナーが連続する険しい山道。交通量も少なく、時折ハイカーたちとすれ違う程度だ。ジンジャーの家はそんなタンタラス・ドライブを登った山頂付近にある。

鬱蒼とした山中に広がる、苔むすような森の中、ひっそりと佇む彼女の家は標高614mのタンタラスの丘よりもさらに高い位置に建っている。まるで天空からホノルルの街を見下ろしているような気にさせる、神々しい景観だ。雨が降るこの日は、時折七色に輝く虹を見ることもできた。

タンタラスの山中に佇む1950年代のリトリートハウス

タンタラスの山中では毎日のように虹が現れる。

キャンプから帰ったばかりだというジンジャーは、「古い家だからドアを開けるのも少しテクニックが必要なのよ」と笑って我々を迎えてくれた。その家は築65年、古い溶岩の上に建てたラバ・ハウスだ(溶岩の家)。

家族ぐるみで付き合いのあったオーナーが亡くなった後、彼女はこの家を譲り受けた。古い家だがオリジナルの部分を残してリノベーションをした室内は、美しい家の骨格を生かすようにシンプルに飾られている。

タンタラスの山中に佇む1950年代のリトリートハウス

ハワイ島在住のマユミ・オダの作品などミッドセンチュリーとハワイアンアートの融合を楽しむベッドルーム。

1階のリビングの床材はハワイ特有のコア材を使用している。ここは建築当時のオリジナルで、彼女がこよなく愛している部分でもある。ドアや窓も新築当時のもの。スライドドアのガラスはサン・プロテクションを施した淡いブルーの色合い。キッチンとリビングにあった壁は取り壊され、リビング・ダイニング・キッチンがひとつになった開放感の高い間取りに変更されている。

どの部屋にも造作されたビルトインのシェルフがあり、庭に咲くモンステラの葉や香りのいい花々が飾られていた。「古いけれど、この素敵な家に住むことは私の夢だったの。タンタラスの森の中に住んで、時々ハイキングを楽しみながら暮らすのは最高の気分よ」と、彼女は静かに微笑む。リビングから望む壮大な景色、そして古くても心地良いこの家は、ジンジャーにとって探し求めてきた理想の住処なのだ。

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|SHINOGU SATO
PUBLISHED|2020
SOURCE|Cal vol.32

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