レジェンドと呼ばれるプロ・スケートボーダーのスティーブ・キャバレロ。彼が初めて製作したショーバイク、トライアンフが注目を集めている。Indian Scoutを落とし込んだTriumph Scoutなる一台、その魅力に迫る。

2016年のBorn-Free8で Triumph Pre-Unit部門のBest賞を獲得したのが、ここに紹介する1952年型トライアンフである。プレユニットとは、エンジンとミッションが別体のモデルのことを指し、一体となった1963年以前の型式のことをそう呼んでいる。プレユニット車両というだけでヴィンテージ感が漂うが、こちらの車両はさらに貴重なヴィンテージ・パーツをちりばめた、クラシックレーサーを彷彿とさせる一台なのだ。

オーナーはプロ・スケートボーダーのスティーブ・キャバレロ(Steve Caballero)。「キャバレリアル」というオリジナルトリックを生み出したことでも知られるスケボー界の生けるレジェンドだ。そんな彼はミュージシャンでもあり、トラディショナル・ホットロッダー、アーティストなど多彩な才能の持ち主。それに加え、初めてのショーバイク製作に挑戦したということで注目が集まった。

スティーブはトライアンフのカスタムを主に手がけるThompson’s Cyclesのビルダー、ブライアン(BryanThompson )にプロジェクトを託した。ショーバイクには、戦前のインディアン・スカウトのテイストを盛り込みたいと考えていた。そのためスカウトの持つ重厚な雰囲気を投影すべく、クラシックなパーツを軸に据えたのだ。なかでもこの車両の一番の特徴といえるJake Robbins Vintage Engineeringのガーダーフォークは、研究を重ね具現化された英国生まれのプロダクツ。オーセンティックなデザイン性と現代の技術がマッチした逸品の起用が奏功した。

また、ブラス素材のヘッドライトは正真正銘バーミンガム・メイドのMILLER製ヘッドライドで、スティーブが苦労の末に手に入れたもの。おそらく1930年代のものと思われる。そうしたパーツを融合させたアピアランスは、インディアン・レッドとゴールドのコンビネーション、さらにはブラックアウトの足元で彩られ、インディアンの持つアイデンディティが違和感なく調和された。

一方、オリジナルのアイデアを盛り込んだパートも多く、なかでもワンオフのハンドコントロールは、ハンドルバーから内側にレバーを向けたデザインを採用、ヴィンテージタイプのバレルグリップを組み合わせており、オリジナリティをのぞかせる。エンジンは、トライアンフを多く手がけるミッキー(Mickey Peters)によるもので、1958年モデル650ccをベースにマイルドにホップアップされたものを搭載。エグゾーストやリアフェンダーはLowbrow Customs製のものを選択。全体のバランスを考慮しデザインされたワンオフシートは、ポジショニングを優先しながらセットアップされ、快適な走行が約束された。

年代物やデザイン製に優れたパーツを探したり、あるいは選択するプロセスがショーバイク製作の醍醐味だ、と語るスティーブ。年末に開催されるYokohama Hot RodCustom Showにゲストバイクして日本に上陸することが決定しており、その日を心待ちにしているそうだ。

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|REMI KOHARA
PUBLISHED|2016
SOURCE|NOBLE RIDE VOL.01


関連記事

AD

ページ上部へ戻る