ホノルルのダウンタウンやチャイナタウンから程近い場所に自宅を兼ねたアートワークスタジオを構えるジュリアス。デザイナーやカメラマンというスペシャリストにとどまらず、製品作りまで総合的に手がけるクリエイターとして注目を浴びる存在だ。そんな彼の暮らす、コンドミニアムを訪れた。
ワイキキが観光客向けの街だとしたら、ホノルルのダウンタウンはローカルたちが働くビジネス街だ。もっとも人口100 万人に満たない島だけに、ダウンタウンの規模も決して大きくはない。オフィスだけではなくコンドミニアムなどの共同住宅も多く、隣接するチャイナタウンと共に、職住が近接した効率のいい場所ともいえる。
若く才能あふれるクリエイターとして注目されつつあるジュリアスの住まいも、そんなダウンタウンの外れにあった。
シカゴ・イリノイ大を卒業してすぐにハワイにやってきたジュリアスは、メインランドから移住してくる数多くの人々と同じように、海がなく寒い故郷を嫌い、暖かい海のある場所を求めてやってきたひとりだ。
もっとも、何か当てがあったわけでもなく、知り合いもいないままホノルルへやってきたというのが、いかにも自由奔放な彼らしい。
ホノルルにたどり着いて最初にしたのはクルマの購入だったそうだ。しばらくはそのクルマで寝泊まりをしながら住居や仕事を探した。
カメラマンやスタジオアーティストとしていくつかの仕事をこなす内に、やがてデザイナーとしての才能が芽生える。
しばらくすると勤務先のデザイン会社でパッケージ・デザインなどを担当するまでになったが、「ボクが本当にやりたいことはなんだろう」と自問自答。やりたいことだけに徹するために「Mango Creative」という会社を設立、独立したデザイナーとしての活動を始めたのだ。
ジュリアスの住まいでもあるアトリエは、そんな自身の会社のアートワークスタジオも兼ねている。中層階のコンドミニアムは1973 年に建築されたものだが、2013 年にリノベーション。家賃はおおよそ月1800-2200 ドル。邦価換算で20 万円前後(取材当時)という条件は、ホノルルでは標準的なものだ。
各居室は2フロアのメゾネットタイプとなっており、ジュリアスの部屋は3 ベッドルーム+1バスルーム。床面積は約70 平米とけっして広くはないが、独身のジュリアスには十分なサイズだろう。
現在はこのスタジオで大きな家具などのデザインを手掛ける一方、サインボードや時計など小物の制作も手掛けている。昨夏にはホノルルの恒例イベント「メイド・イン・ハワイ」にも初出店。ところが、予想以上の人気となり途中で売り切れになってしまったそうだ。
ハワイらしいデザインをあしらった壁掛け時計など、彼の作品はどれもユニークで独創的。インスタグラムでも作品を紹介しているので、チェックしてみるといいだろう。
なんの目的もなくホノルルへたどり着いたジュリアス。5 年の歳月を経て、若きクリエーターはしっかりとした夢を描くようになり、今日もスタジオにこもって素敵な作品作りに没頭する。
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|SHINOGU SATO
PUBLISHED|2020
SOURCE|Cal vol.32