夢に描いたカントリーハウスでの暮らし

ひと口に「カントリーハウス」といっても、スタイルは千差万別だ。赤毛のアンに登場するような板張りのラップサイディングが特徴的なアメリカンスタイルもあれば、石や煉瓦を積み上げたようなフレンチスタイルもある。群馬県南部に建築されたK 邸は、まさに後者をイメージしたクラシックな意匠が特徴的。使用する材料にも徹底的にこだわった、まるでヨーロッパの古民家のような住まいである。

ルーシー・モード・モンゴメリーが1908 年に発表した長編小説「赤毛のアン」は、テレビアニメ化されたこともあり、日本でも馴染みの深い物語だ。主人公のアン・シャーリーが暮らす緑の切り妻屋根が特徴的な家は「グリーンゲーブルズ」とよばれ、代表的なカントリーハウスのひとつとしても数えられている。

木をふんだんに使った家は、作者の生まれ育ったカナダ・プリンスエドワード島に実在する家をモチーフにしており、板を横張りにしたラップサイディングや鎧戸など、その特徴的なディテールは、今なお洋風建築では高い人気を誇っている。こうしたアメリカンスタイルのカントリーハウスと双璧をなす、もうひとつのカントリーハウスが、ここで紹介するフレンチカントリーハウスだ。


板張りの外装が特徴的なアメリカンカントリーに対して、フレンチカントリーは塗壁仕上げが一般的。最近はシンプルに仕上げたスタイルも多いが、よりクラシカルに見せるなら石やレンガで積み上げられたような、まるでヨーロッパの古民家のように見せたスタイルも人気が高い。インテリアは木をふんだんに使用した温もりのあるもので、薪ストーブの炎が揺らぎ、静かな空間にパチパチと薪が燃える音が響いている。

群馬県南部の市街地に建つK邸も、そんなクラシックなスタイルで仕上げられたカントリーハウスである。K邸の施工は群馬県伊勢崎市に拠点を構える「カントリータウンアンドカンパニー」社が担い、200 坪を超える大きな敷地に石積みの壁を模した家が建築されている。躯体はポスト&ビームとも呼ばれる木造軸組工法(在来工法)を採用するが、その材料の大半は海外から輸入するなど、使う材料の一つひとつにまで徹底してこだわったものだ。

梁や柱はログハウスにも使用されるダグラスファー(米松)を使用するが、梁の幅は20cm。高さは最大で40cm 以上もある。ハンドカットのログハウスで使用する丸太と異なり、K邸で使用される木材は製材しているため原木は直径50cm 以上の太さが必要となり、国内では入手が難しくカナダから輸入しているそうだ。

室内は全面を漆喰の塗壁としているが、職人によりコテムラ仕上げとした上、さらに蜜蝋ワックスで上塗りするというひと手間を加えているのが特徴。ワックスは汚れ防止という機能性に加え、漆喰の凹凸に絡み合い濃淡差を強調することで、壁に陰影を出すという視覚的な効果も発揮する。リビングには鐵音工房(くろがねこうぼう)製の薪ストーブが設置されているが、じつはこれも「カントリータウンアンドカンパニー」社の標準仕様のひとつ。冬期は暖房を1台で賄うだけでなく、薪ストーブの熱を利用してクッキングオーブンとしても利用できるそうだ。

2018年に竣工したこの大きな間取りの家には、施主のKさんご家族が4人で暮らしている。カントリースタイルの家を選んだのは奥様の好み。いくつものハウスメーカーを訪ねたが、「カントリータウンアンドカンパニー」社の建築する家が、まさに理想とするカントリーハウスそのものだったという。

庭には南面に物置として使用している小屋「ガーデンシェッド」を備え、北側には大きな薪棚もこしらえてある。市街地まではやや距離があるが、山裾を切り開いた眺望のいい住宅地は、どの家も景観条例により高いフェンスなどがなく、開放的でまるで海外の別荘地のような雰囲気に包まれている。土地選びもまた、理想的な暮らしを実現するための必須条件であることを、改めて感じさせられた素晴らしいカントリーハウスであった。

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PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2021
SOURCE|Cal Vol.43


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