季節と共に移り変わる森の景観を堪能する家

「森の中の暮らし」は北海道で生まれ育ったT邸の奥様が夢に描いてきたものだ。ご主人は周囲の森を眼下に収める眺望のいいリビングと、ヴィンテージ・コレクションを組みあわせた自慢のオーディオスペースを手に入れた。
外がどんなに吹雪いても、家の中は暖かく、そして静かな空間が広がる。素足で歩くのが気持ちいい木の家では、ふたりの子どもたちの笑い声だけが響き渡る。北海道東川町の森の中に、ひっそりと佇むT邸を訪ねた。

北海道東川町に拠点を構える木製家具メーカー「北の住まい設計社」は、北海道産の広葉樹だけを使い、熟練の職人の手により昔ながらの手仕事で生産を行うなど、家具だけでなくその素材である木材まで十分に知り尽くした「木のスペシャリスト」集団だ。

2001年にはこうした経験や技術を背景に、住宅建築を専門に担う「北の住まい建築研究社」を立ち上げ、北海道を中心に全国で道産の無垢材をふんだんに使った高気密・高断熱の木造住宅を手がけている。

北海道東川町に建つT邸は、その「〜建築研究社」が設計・施工したもので、約330坪という土地に2階建ての家屋を建築、2019年10月に完成した。

もともと大阪出身というご主人はスノーボードを楽しむためにニセコへ移り住み、北海道出身という奥様と出会って結婚、ふたりの子どもに恵まれた。現在の住まいはその奥様が思い描いてきた「森の中で暮らし」という夢を叶えるために手に入れたもので、アカエゾマツやトウヒなどの針葉樹、ミズナラや白樺などの広葉樹に囲まれた静かな森の中に建築されている。

木造軸組構法で建築された住宅は、1階に主寝室や子ども部屋などの個室を配置。2階は壁面を極力廃止したオープンスペースとし、コンツーラ製薪ストーブのあるLDKや、ご主人のコレクションが並ぶオーディオスペースなどが並んでいる。

2階に配置したリビングは、著名な建築家が建てた山荘を夢見てきたTさんが、「~建築研究社」に相談して実現したもの。窓ガラス越しに家を囲む森の景観を楽しむことができるようにと、特にこだわった部分だ。

リビングにしつらえた大きなピクチャーウインドウは、季節によって表情を変える森の風景を毎日楽しめるという。あえて壁を造らず、オープンな形にしたオーディオスペースには、オーナーのコレクションである300 枚以上のレコード、優しい音色を奏でるマランツ製の真空管アンプ、まるでコンサートホールにいるかのような臨場感を味わえるタンノイ製のスピーカーなど、ヴィンテージ・オーディオの数々も並んでいる。

ご主人は雪に囲まれる冬の間、このオーディオスペースで好きな音楽に聴き入りながら景色を楽しむそうだ。暖かな家の中に響くジャズの音色。傍ではパチパチと燃える薪の音が絶妙なるハーモニーを奏でる。森の中に佇むT 邸は、北海道の厳しい冬を楽しむ素晴らしい「木の家」だった。

CONTACT_北の住まい設計社
WEB_http://www.kitanosumaisekkeisha.com
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2021
SOURCE|Cal Vol.43


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