家の中でも外でもアウトドアライフを堪能できる趣味の拠点

羊蹄山を見上げる眺望の良い敷地に、昨年新居を建築したH さんご夫妻。ビルトインガレージを備えた「木の家」は、ゆったりとしたアウトドアライフを楽しむ趣味の拠点として建築されたもの。ガレージには2台のクルマと2台のオートバイを格納。さらにガレージ内に中二階を設けて書斎とストレージを追加。天気の良い日は北海道のあふれる自然を満喫するべく、林道やワインディングを楽しみ、冬は薪ストーブを使いながら快適な室内でゆらぐ炎を楽しんでいる。

豊かな自然に囲まれた環境は、美しい景観を約束してくれる代わりに厳しい冬をもたらすなど、極端な二面性を持つことが多い。きれいな円錐形の姿から“蝦夷富士(えぞふじ)”の別名を持つ羊蹄山。その美しい山体を見上げる絶好のロケーションに建築されたH 邸も、冬はすっぽりと雪に囲まれ、夏とはまったく異なる景観に様変わりする。

H邸のある北海道倶知安町(くっちゃんちょう)は、世界でもトップクラスの雪質を誇るスノーリゾートがいくつも連なるニセコ町に隣接している。人口1 万5000人ほどの小さな町は、清流日本一に認定されたこともある尻別川が東西を貫き、日本海へと注ぐ。サケやサクラマスが遡上することでも知られるこの尻別川は、カヌーやラフティングなど、夏はウォーターアクティビティの拠点としても人気を集めるスポットだ。

一方で、冬は積雪量も多く、最低気温は氷点下10度を下回ることも少なくない。ゆえに積雪の始まる12月から雪解けする4月頃までは家の周囲をぐるりと雪が囲み、一面銀世界の中での暮らしへと変わるそうだ。

こうした季節によって極端に異なる気象条件下でも常に快適な暮らしを営めるように、H邸は極めて高い住宅性能を基本に、四季折々に移り変わる大自然を堪能できるように景観にも配慮されたユニークな設計になっている。

“サンロクベース”と名付けられた邸宅は敷地面積約500坪。南側に広がる羊蹄山の景観を生かすように、南面は吹抜けのある大開口を備えたLDKを中心とし、どこにいても美しい山体を眺めることができるように工夫されている。

新在来木造構法で建築された家は、東側を斜めに配置することで変化をつけ、公道側からの視線を上手に隠しているのが外観上の特徴だ。屋根は北側に向かって傾斜した片流れになっており、屋根に降った雪が自然と流れ落ちるように設計されている。屋根に積もった雪が滑り落ちても南面の景観は保たれるため、深々と雪が降り積もる中でも窓の外に広がる景観を楽しめるように考えられている。

こうした設計の工夫により、H邸では目にも眩しい緑が一面に広がる夏はもちろん、雪に囲まれた冬もまた、快適な室内から屋外に広がる大自然の変化を感じ取れるのだ。

オーナーのHさんは兵庫で生まれ育ち、大学進学と共に北海道へ。結婚して家族が増えたのをきっかけに倶知安町へ住まいを構えた。ところが、せっかく建てた自宅が後に北海道新幹線の延伸予定地にあたってしまい、2020年6月に現在の住まいを建築することになったという。

すでに二人のお子さんたちは成人して別居していたことから、新居はご夫婦ふたりだけの生活を中心に考えた間取りとし、西側にビルトインのガレージも設けた。ガレージ内はクルマやオートバイを格納するだけでなく、スキーやキャンプ用品を格納するストレージスペースや、椅子や机を置いた書斎コーナーを設けるなど、ご主人の趣味を堪能する空間になっている。


北海道に移住して以来、アウトドアスポーツを中心に趣味を広げてきたご主人にとって、ガレージは新居の設計にあたってもっとも楽しみにしていた部分。夏はオフロードバイクをクルマに積み込んで羊蹄山の周辺でツーリングを楽しみ、夜は野営をしながら、ご夫婦でアウトドアを満喫。冬は世界中のスキーヤーが憧れるという雪質を誇るニセコのゲレンデでスキーも楽しむ。こうした趣味を堪能できるのも、拠点となるガレージがあるからこそだと、ご主人は語る。

そのガレージから自由に出入りのできる住居側は、吹き抜け造のLDKを中心にしている。大きな開口のある南側には庭側のウッドデッキと床レベルを合わせた土間を設けて、ドブレ製の薪ストーブを設置。じつはH邸には温水暖房のセントラルヒーティングによる全館暖房が備わっているのだが、H邸ではほぼ未使用。厳冬期でも薪ストーブひとつで十分に暖めることができ、天井高4m以上ある大空間はもちろん、家の隅々まで快適な室温を維持できるそうだ。

冬の厳しい気象条件の中でも快適に暮らせるこのH邸は、北海道と千葉に拠点を構える「SUDO ホーム」が設計・施工を担当した。フローリングにはミズナラなどの道産無垢材、外壁には道産スギ板を使用するなど、北海道の良質な木材をふんだんに使用して完成させている。

アウトドアライフを楽しむご夫婦が、四季折々の移ろいを楽しみながら快適に暮らす、まさに理想的な「木の家」といえるだろう。

CONTACT|SUDO ホーム
WEB|https://sudo-con.co.jp
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2021
SOURCE|Cal Vol.43


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