夕陽を眺める高台で男の趣味を満喫できる“マンケーブ”

夕陽を眺める高台で男の趣味を満喫できる“マンケーブ”

マンケーブ。直訳すれば、男の洞窟というその言葉は、まさに言い得て妙である。趣味のコレクションに囲まれた小屋は、まさに洞窟のようだ。マイホームの中ではなく、あえて外に作った小屋。それは夕陽を眺めながら、誰にも邪魔されることなく趣味を楽しむ場所を求めた結果だった。もっとも、そんな素敵な場所には、やっぱり子供たちがやってくる。それもまたいいだろう、彼はまた良き父でもあるのだから。

夕陽を眺める高台で男の趣味を満喫できる“マンケーブ”

▲廃材の錆びたトタンを内壁に施工したMさんの小屋。ファイヤーストーンの看板やアメグラのメモラビリアなど室内には自慢のコレクションが飾られている。結婚前から収集してきたというコレクションは、小屋の完成で初めてちゃんとディスプレイできたそうだ。

アメリカでは男性の趣味部屋を“Man Cave”(マンケーブ)と呼ぶ。女性の場合は“She Shed”(シーシェッド)。どちらも、趣味を楽しむために設けられた空間を指す言葉だ。多くの場合は音楽だったり、玩具だったり……あふれんばかりの趣味のコレクションで覆い尽くされている。

そんな趣味の部屋で、屈強な男たちが、まるで幼児のような屈託のない笑顔で趣味を楽しむ。マンケーブとは、つまり誰にも邪魔されない“自分だけの城”でもあるわけだ。

福岡県飯塚市の住宅街の一角にも、そんなマンケーブのひとつが建っている。 Mさんは、音楽もファッションもどっぷりとアメリカン・カルチャーに浸ってきたという趣味人。映画「アメリカン・グラフティ」に刺激され、ダイキャストのミニカーも多数コレクションしてきた。

そんなオーナーが購入したというマイホームには、裏庭にたまたまわずかなスペースがあった。当初はそこにウッドデッキを設置してバーベキューを楽しむつもりだったという。

夕陽を眺める高台で男の趣味を満喫できる“マンケーブ”

▲外壁の塗装はご主人のセレクト。周囲には人工芝を敷き詰めている。市街地の住宅街ではあるが、崖の上にあるため、周囲の住宅の屋根はS邸の床面より下にある。

ところが、デッキの建築を請け負った「パティーナ」が、小屋のスペシャリストだったことから一転、“いつかは……”と夢見てきた、趣味の部屋を建築することとなったのだ。

西側に面した土地は高台の端にあたり、眺望が開けていたことも理由になった。

M家では夕陽が沈む時間帯になると、夫婦でお酒を嗜みながら真っ赤に染まった空を眺めるのが日課だった。

「小屋があれば、1年中快適に夕陽も眺められる」。 

こうして完成した小屋は躯体のみ「パティーナ」に依頼し、内外装の仕上げはご主人が楽しみながら仕上げたという。

夕陽を眺める高台で男の趣味を満喫できる“マンケーブ”

▲屋根材は耐用年数50年を誇るというフランス生まれのオンデュリン・クラシックシート。メンテナンスフリーな屋根材。

床面積は6.4平米。畳にしてわずか3.8帖という小さなスペースだが、このサイズ感がまた趣味を楽しむには絶妙な空間となっている。

夕陽を楽しめるように西側にはアンティークの木製窓枠もはめ込まれている。内部は廃材のトタンで仕上げて、まるでアメリカの古びた納屋のようだ。

ガス管を利用したハンガーは奥様のアイデア。大型トラックのタンクを利用したオブジェはご主人の作品と、ディテールの一つひとつにオーナーのセンスを感じられる。 

リーバイスの501XXにレッドウイングのブーツなど、結婚前から集めてきたというコレクションは、小屋の完成により日の目をみることとなった。Mさんのホビーコレクションにとってもまた、自分の居場所が出来上がったのだ。

CONTACT|Patina
WEB|https://ameblo.jp/garden-pa-2012/
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2021
SOURCE|小屋 ちいさな家の豊かな暮らし Vol.4
Copyright © CLASSIX
※本WEBサイトにて掲載されている写真及びテキストの無断転載を禁じます。
※本記事の内容は出版物の掲載時点ものとなります。


関連記事

AD

ページ上部へ戻る