セマショー 2026(SEMA SHOW 2026)|世界最大級のカスタムカーの祭典、ラスベガスで始まる
- 2026/11/5
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最新技術を惜しみなく投入したハイパフォーマンスカーから、往年の名車を大胆にアレンジしたレストモッド、巨大なタイヤを履いたオフロードマシンまで。ジャンルも時代も異なるクルマが一堂に会し、独創的なスタイルと卓越した製作技術を競い合う。そこには常識にとらわれない自由な発想と、クルマを楽しむ文化が息づいている。進化を続けるアメリカンカスタムの最前線を、現地で取材した注目の展示車両とともに紹介する。
▲セントラルホールの入口付近。常に人で溢れかえっている。
世界最大級のカスタムカーの祭典、ラスベガスで開幕
2026年11月3〜6日、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのコンベンションセンターで「SEMA SHOW 2026(以下SEMAショー)」が開催されている。世界各国の自動車メーカー、アフターパーツブランド、カスタムショップが集まる世界最大級の自動車アフターマーケット見本市だ。
会場はセントラル、ノース、サウス、ウエストの各ホールに加え、屋外展示スペースまで広がる。屋内だけでも東京ドーム約2.2個分の展示面積となり、建物を移動するだけでも相当な距離を歩く。屋外にも約9万3000㎡規模の展示・イベント空間が設けられるため、単なる展示ホールの集合というより、巨大な自動車イベントの街といった印象だ。
展示車両については、出展ブース内のデモカーや会場通路の特設展示、屋外に並ぶカスタムカーなど、さまざまな形で披露される。
このSEMAショーは単なるカーショーではない。会場に展示されるクルマの多くは、エンジン、サスペンション、ブレーキ、ホイール、タイヤ、内外装パーツなど、各ブランドが持つ技術や商品をアピールするために製作されている。
▲会場はラスベガス・コンベンションセンター。すぐそばにはいくつものホテルが軒を連ねている。
メーカーからカスタムショップまで、2200以上のブランドが集結
SEMAショーの面白さは、巨大な自動車メーカーと小規模なカスタムショップが、同じ会場でそれぞれの技術やアイデアを競い合っているところにある。
2026年は2200を超えるブランドが参加し、そのうち400以上が初出展。会場にはエンジンやサスペンションを扱う老舗メーカー、最新の電子制御システムを開発する企業、カスタムホイールやタイヤの専門ブランド、ボディ加工や塗装を得意とするショップなどが軒を連ねる。自動車メーカーによる大規模な展示もあれば、限られたスペースに渾身の一台を持ち込む小さなショップもある。
当然、展示内容も実に幅広い。1000馬力を超えるハイパフォーマンスカーの隣に、半世紀以上前のクラシックカーが並び、少し歩けば巨大なタイヤを装着したオフロードトラックが目に飛び込んでくる。さらに、ホットロッド、ドラッグレーサー、ローライダー、日本車のチューニングカー、ヨーロッパの高級車まで、ジャンルに統一感はない。むしろ、その雑多さこそがSEMAショーらしいところだ。
会場は展示ジャンルによって大まかに区分されている。セントラルホールにはエンジンやレーシングパーツ、ホットロッド関連のブランドが集まり、ウエストホールではピックアップやSUV、オフロード関連が存在感を放つ。ノースホールには内外装カスタムや電装系、サウスホールには工具や塗装、修理関連の企業も数多い。
2026年はウエストホールのパワースポーツ関連エリアも拡充。四輪バギーやサイド・バイ・サイド、二輪、アウトドア用品など、自動車を取り巻くライフスタイルまで展示領域が広がっている。
ここで忘れてはならないのが、SEMAショーは基本的に業界関係者を対象としたトレードショーだということ。新商品の発表や商談、販売代理店とのネットワークづくりが重要な目的であり、一般的なモーターショーとは成り立ちが異なる。
それでも、これだけ多くのカスタムカーが集まる理由は明確だ。実際のクルマに装着し、性能やデザイン、使用方法を見せることが、パーツの魅力を伝えるもっとも分かりやすい方法だからだろう。
広大な会場を埋め尽くす、約1500台規模のカスタムカー
SEMAショーを象徴するのが、会場の至るところに並ぶカスタムカーだ。約1500台の車両は、出展ブース内だけでなく、ホール間の通路や屋外スペースにも並ぶ。
日本のカスタムカーイベントでは、展示車両を一台ずつ見ながら会場全体を巡る楽しみ方が一般的だが、SEMA SHOWではすべてを細かくチェックするのは容易ではない。通路の先に気になるクルマが見えて立ち寄り、数台を撮影したところで別のホールに向かう。ところが、移動する途中にも魅力的な展示が次々と現れる。目的のブースになかなかたどり着けないほどだ。
しかも、展示されるクルマは完成度が高い。
ボディのパネルラインを一から作り直したレストモッド、オリジナルの車体をほとんど残さないほど改造されたホットロッド、巨大なターボやスーパーチャージャーを組み込んだエンジン、タイヤがフェンダーに収まるぎりぎりまで車高を落としたピックアップなど、どれも製作に相当な手間と時間が掛かっている。
カスタムの方向性も一様ではない。最高速やサーキットでのタイムを追求するクルマがある一方で、実用性や快適性を重視したモデルもある。さらに、日常使用を想定しない大胆なデザインのショーカーも少なくない。
トヨタは5台のスノーハンターで雪上カスタムを提案
自動車メーカーの展示で注目したいのが、トヨタ自動車の「スノーハンター・コンセプト」。
トヨタはタンドラ、タコマ、4ランナー、ランドクルーザー、セコイアの5車種をベースに、雪上での移動やアウトドアレジャーを想定したカスタムカーを製作。共通する特徴は、通常のホイールとタイヤに代わって装着された雪上走行用のクローラートラックだ。
一般的なオフロードカスタムでは、大径タイヤやリフトアップサスペンションが主役となる。ところが、スノーハンターでは足元に白いクローラートラックを組み合わせることで、深い雪に覆われた環境を想定した独特のスタイルに仕上げている。
さらに、車体には専用のカモフラージュ柄を採用し、ブラックのアクセントパーツや補助ライトを装備。トヨタのデザイン部門CALTYが全体のデザインを担当し、5台をひとつのシリーズとして見せているのも特徴といえる。
近年のSEMAショーでは、ピックアップやSUVを単に悪路に強くするだけでなく、キャンプ、釣り、雪上スポーツといった用途に合わせて仕立てるクルマも目立つ。
スノーハンターは、そうしたアウトドア志向を象徴する展示のひとつといえるだろう。
▲TOYOTA SNOWHUNTER LANDCRUISER
トヨタブースでは「スノーハンター・コンセプト」を披露。ランドクルーザー250をはじめ、タンドラ、タコマ、4ランナー、セコイアの5車種をベースとした雪上走行仕様のカスタムカーで、足まわりに雪上走行用のクローラートラックを装着し、ボディ下部には純正スキッドプレートやロックレールを備えている。ルーフにはPrinsu製ラックとThule製スキーキャリアを搭載。
▲TOYOTA RAV4 WOODLAND
トヨタが披露した「ウッドランド」コンセプトシリーズは、RAV4をはじめ、グランドハイランダー、シエナ、bZ、クラウンシグニアの5車種をベースとしたアウトドア志向のカスタムカー。写真はRAV4ウッドランド・プラグインハイブリッド・コンセプトで、日常の使いやすさとオフロードでの走破性を両立させたクルマ。リフトアップや大型オーバーフェンダー、オールテレーンタイヤ、ルーフラックなどを採用し、アクティブなスタイリングに仕上げている。
日産はフロンティアとアルマーダで独自のオフロードスタイルを披露
日産ブースも、SUVとピックアップを中心に多彩なカスタムカーを展開した。
中でも迫力があったのが、ミッドサイズピックアップのフロンティアをベースにした「ローニン・コンセプト」だ。
搭載される3.8L V6エンジンにはツインターボを追加し、パワーアップを図っている。さらに、フルサイズピックアップのタイタンからサスペンション関連部品を流用。トレッドを約30cm拡大し、車高も約10cm以上引き上げることで、標準車とは大きく異なるスタイルを実現している。
足元にはNISMO製17インチ試作ビードロックホイールと35インチのYokohama Geolandar X-ATを装着。ロックレールや補助ライト、スペアタイヤキャリアなども備える。単純なリフトアップではなく、走破性能そのものを高めるためのカスタムといえる。
もう一台、フルサイズSUVのアルマーダをベースにした「ジャングル・パトロール・コンセプト」も個性的。
こちらは一般的なSUVの屋根を取り払い、ロールケージを組み込んだ開放的なボディ構造が特徴。乗員が周囲の景色を楽しめるような設計で、通常のオフロードカスタムとは異なるアプローチを見せている。
大型のオフロードタイヤや専用サスペンション、補助ライトなどを組み合わせ、ジャングル探検やサファリツアーを思わせる一台に仕上がっている。
一方、クラシックスポーツカーの分野では、初代フェアレディZをベースにしたダットサンS30コンセプトも注目を集めた。
往年のS30型を現代のパフォーマンスカーとして作り直す試みで、現行フェアレディZの3.0L V6ツインターボエンジンを搭載。カーボン製の外装パーツや足まわりの強化によって、クラシックなデザインと現代の走行性能を融合させている。
こうして見ると、日産の展示には明確な方向性がある。SUVやピックアップでは冒険や走破性を重視し、スポーツカーでは歴代モデルの魅力を現代の技術で引き出しているのだ。
▲NISSAN FRONTIER RONIN CONCEPT
3.8L V6ツインターボエンジンを搭載し、悪路走破性を高めたフロンティアの「ローニン・コンセプト」。日産ブースに展示された一台で、タイタンの足まわりを流用し、車高を約10cmアップ、トレッドも約30cm拡大している。ニスモ製17インチ試作ビードロックホイールには35インチのヨコハマ・ジオランダーX-ATを組み合わせ、専用バンパーやルーフラック、補助ライトも装備。
▲NISSAN ARMADA JUNGLE PATROL CONCEPT
日産ブースでは、フルサイズSUVのアルマーダをベースにした「ジャングル・パトロール・コンセプト」を披露。サファリ仕様をイメージしたカスタムカーで、ルーフを取り払い、パイプ状のロールケージと内向きに配置した後席を採用している。足まわりには専用ロングトラベルサスペンションを組み込み、ニスモ製18インチ試作ホイールに37インチのヨコハマ・ジオランダーM/Tを装着。スチール製バンパーや補助ライトも備えている。
▲NISSAN DATSUN S30 CONCEPT
初代フェアレディZのS30型を現代風に仕立てた「ダットサンS30コンセプト」。フォーミュラドリフトで活躍するクリス・フォースバーグが手がけた一台で、現行フェアレディZの3.0L V6ツインターボエンジンを搭載する。ボンネットやフェンダーなどの外装にはカーボン製パーツを採用し、足まわりにはニスモ製17インチ鍛造ホイールと専用サスペンションを装着している。
HRCは1300馬力超のハイブリッドレーサーを初公開
HRC(ホンダ・レーシング)のブースでは、モータースポーツの歴史と最新技術を同時に見ることができた。
2026年の展示では、レーシングカーやコンセプトカー、二輪の競技車両など計12台を披露。過去の挑戦を振り返る歴史的なモデルから、これから実戦に投入される最新マシンまで、幅広い構成となっている。
その中心となるのが、新開発の「パスポート・BAJAスペック」だ。
ホンダのSUVであるパスポートの名を冠しているが、中身は砂漠レースの最高峰カテゴリーを目指して開発された本格的なトロフィートラック。HRC USとMason Motorsportsが共同開発を担当し、最高出力は1300馬力以上という。
パワートレインには2.4L V6ツインターボエンジンと800Vのハイブリッドシステムを組み合わせる。ハイブリッド技術は燃費や環境性能だけでなく、圧倒的なパフォーマンスを引き出すためにも使われているわけだ。
2027年のSCOREワールド・デザート・チャンピオンシップへの参戦を計画し、ドライバーにはBAJA 1000で2度の優勝経験を持つブライス・メンジーズを起用。過酷な砂漠レースで総合優勝を目指すという意欲的なプロジェクトだ。
その一方で、展示されていた1969年式ホンダN600 BAJAにも目を引かれた。
こちらは1970年のメキシカン1000に挑戦した小型レーシングカーで、現在のBAJA 1000につながる歴史の一端を担ったモデルだ。
598ccの空冷2気筒エンジンを搭載する小さなFF車をベースに、車高を上げ、ロールケージやオフロードタイヤを装着。現在の巨大なトロフィートラックとは対照的な姿だが、未知の領域に挑戦するという考え方は共通している。
約半世紀以上の時代を隔てた2台を同じ会場で見ることができるのも、SEMAショーならではの面白さだろう。
▲HONDA PASSPORT BAJA SPEC TROPHY TRUCK
HRCブースで初公開された「パスポート・バハスペック」は、2027年のSCOREワールド・デザート・チャンピオンシップ参戦に向けて開発されたトロフィートラック。2.4L V6ツインターボエンジンと800Vハイブリッドシステムを組み合わせ、最高出力は1300馬力以上を発揮。足まわりにはFOX製ロングトラベルサスペンションとTOYO TIRES製タイヤを装着。ドライバーには、BAJA 1000で2度の優勝経験を持つ ベテランのブライス・メンジーズがドライブする予定で、2027年のBAJA 500でデビュー予定。
▲HONDA N600 BAJA
HRCブースに展示された1969年式ホンダN600バハは、アメリカン・ホンダが初めて四輪モータースポーツに投入した歴史的な一台。1970年のバハ1000に参戦した実車で、598cc空冷2気筒エンジンには大型キャブレターやハイカムを組み込み、足まわりの強化や車高アップ、オフロードタイヤの装着などを実施。ゼッケン278を掲げ、ビル・ロバートソンJr.とデイブ・イーキンスが過酷な砂漠レースに挑んだものの、駆動系のトラブルによりリタイア。その後、長年所在不明となっていたが、ホンダN600の専門家Tim Mingsによって発見・再生されたという。
TOYO TIRESのTreadpassに27台の個性派カスタムカーが集結
SEMAショーの会場内でも、特に多くのカスタムカーが並ぶことで知られるのが、TOYO TIRESの特設展示エリア「Treadpass」だ。
セントラルホールとサウスホールを結ぶ通路に設けられた展示スペースで、2026年は27台のカスタムカーを集結。しかも、いずれも今回のイベントで初公開される車両として発表されている。スポーツカーからSUV、ピックアップ、クラシックカー、さらには高級車まで、幅広いジャンルのクルマが並ぶ。
一般的なタイヤメーカーの展示と異なるのは、タイヤの製品紹介だけでなく、製作ショップやオーナーの個性を前面に押し出しているところだ。
例えば、JH Restorationsが製作した1974年式フォード・カプリMk1は、往年のヨーロッパ製スポーツクーペをベースとしながら、大胆なワイドボディを採用。手作業で製作した金属製のフェンダーやBASFのPapaya Sparkで仕上げたボディ、Ford Racing製347エンジンなど、外観からメカニズムまで徹底的に作り込まれている。
また、Bisimotoが手がけた1979年式ポルシェ935 Baby Mobyは、クラシックなレーシングカーのスタイルを残しながら、637馬力の電動パワートレインを搭載したモデルだ。78kWhのバッテリーを組み込み、最新のEV技術とレースカーのデザインを融合させている。
さらに、WALD USAが製作した2027年式ロールス・ロイス・カリナンには、Black Bisonボディキットを装着。大型のフェンダーやエアロパーツに加え、24インチのホイールを組み合わせ、高級SUVならではの迫力を強調している。
もちろん、オフロードカスタムも充実している。
トヨタ・ランドクルーザー80系をベースにしたDissent Off-Roadのカスタムカーは、その好例だ。サウジアラビアから輸入した車両を大幅に改造し、大型ターボを搭載したエンジンやポータルアクスル、42インチタイヤなどを採用。4x4spodの電装システムやBaja Designsのライトも組み込まれている。
ポルシェ911をベースにしたRussell Builtの「Safari Sportsman」も、オフロードカスタムの幅広さを感じさせる一台。スポーツカーを悪路走行に対応させるという大胆な発想ながら、専用のサスペンションやワイドフェンダーなどを組み込み、機能性とスタイルを両立している。
これほど多彩な車両がひとつのエリアに集まるのは、TOYO TIRESが幅広い車種に対応するタイヤを展開しているからでもある。
Treadpassは単なる通路の展示ではない。ブランドとビルダーが協力し、カスタムカーという形で製品の世界観を表現する特別な空間なのだ。
▲RUSSELL BUILT PORSCHE 911 SAFARI SPORTSMAN
ポルシェ911(964型)をベースに、Russell Built Fabricationが製作した「Sportsman」。専用サスペンションによって約254mmのホイールトラベルを確保し、ホイールベースも約51mm延長している。ワイドフェンダーや大型オフロードタイヤに加え、ルーフラックや補助ライトを装着。迫力あるサファリ仕様に仕上げている。
▲JH RESTORATIONS FORD CAPRI MK1
JH Restorationsが手がけた1974年式フォード・カプリMk1。職人の手によるオールメタルのワイドボディに、BASFのPapaya Sparkを採用。エンジンにはBorla製8連スロットルを組み合わせたFord Racing 347を搭載。足元にはAmerican Racing製17インチホイールとTOYO TIRESのPROXES Sport Rの組み合わせ。
▲TOYOTA LAND CRUISER 80
サウジアラビアから輸入したトヨタ・ランドクルーザー80系を、Dissent Off-Roadがフルカスタム。大型ターボを組み込んだエンジンは約500馬力。足まわりにはポータルアクスルと42インチの大径タイヤを装着。電装系には4x4spod製BantamXを採用し、Baja Designs製ライトやポップアップルーフも備えた本格仕様だ。
アメリカならではのピックアップ文化が会場を席巻
SEMAショーの展示車両を見ていて、アメリカらしさを最も感じるのがピックアップトラックの多さだ。
フルサイズのフォードFシリーズやシボレーC/Kシリーズ、ダッジのクラシックピックアップなど、ベースとなるクルマは実に幅広い。日本では商用車のイメージが強いピックアップだが、アメリカでは日常の移動手段であり、趣味や仕事にも使える身近な存在。だからこそ、カスタムの方向性も多岐にわたる。
本格的な悪路走行を想定して車高を大幅に上げたモデルもあれば、逆にボディを地面すれすれまで落としたストリート仕様もある。巨大なタイヤとロングトラベルサスペンションを装着したハイリフトの隣に、地面にボディを着地させたスラムドのカスタムトラックが並ぶ光景も珍しくない。
個人的には、今回の取材で印象的だったのが、Jack’d Up Trucksが製作した「YETI」だ。
1973年式フォードF600のクラシックなクルーキャブボディに、2025年式フォードF350 Tremorのシャシーを組み合わせた大掛かりなカスタムで、エンジンには7.3L V8のゴジラを搭載。さらにWhipple製スーパーチャージャーを追加し、現代のハイパフォーマンストラックに匹敵する迫力を与えている。
一見すると古い大型トラックだが、シャシーやパワートレインは現代的。見た目の懐かしさと中身の新しさという、レストモッドの考え方を大型ピックアップに応用した一台といえる。
▲JACK’D UP TRUCKS FORD F600 YETI
1973年式フォードF600クルーキャブに、2025年式フォードF350 Tremorのシャシーを組み合わせた「YETI」。ワイオミング州のカスタムショップJack’d Up Trucksが製作した一台で、7.3L V8ゴジラエンジンにWhipple製スーパーチャージャーを装着し、Ford製10R140トランスミッションを組み合わせている。
一方、Roadster Shopの展示エリアでは、クラシックなピックアップやSUVを現代の技術で仕立てた車両が目立っていた。
Creative Rod and Kustomsが製作した1974年式シボレーK10は、鮮やかなグリーンのボディが特徴。
Roadster Shop製RS4シャシーにLT4エンジンを組み合わせ、Forgeline製ホイールやBFGoodrich製タイヤを装着。クラシックな外観を残しながら、走行性能や快適性を向上させている。
また、Johnson’s Hot Rod Shopによる1986年式シボレーK5ブレイザーは、ProCharger製スーパーチャージャーを組み込んだLT4エンジンを搭載。極端なローフォルムと滑らかなボディラインが印象的な一台だ。
注目したいのは、こうした車両が単なる外観重視のカスタムにとどまらないこと。
専用設計のシャシーに最新のエンジン、トランスミッション、サスペンションを組み合わせることで、数十年前のクルマを現代の道路環境でも楽しめる仕様へと進化させている。古いボディを残しながら、走りや快適性を犠牲にしない。この方向性は、現在のアメリカンカスタムシーンを理解するうえで欠かせない要素だ。
▲1974 CHEVROLET K10
1974年式シボレーK10。RS4シャシーにDon Hardy製LT4エンジンとBowler製4L80Eトランスミッションを組み合わせている。足元にはForgeline製ET3ホイールとBFGoodrich製タイヤを装着。ボディはBASF製塗料で鮮やかなグリーンに仕上げ、ビレットパーツやカスタムレザー内装も採用。
▲1986 CHEVROLET K5 BLAZER
シボレーK5ブレイザーをベースにしたカスタム仕様。Roadster Shopブースに展示された一台で、同社のSPECシャシーを採用し、ProCharger製スーパーチャージャーを組み込んだLT4エンジンにBowler Performance製10L80トランスミッションを組み合わせる。足元にはJHRS製ビレットホイールも装着済み
レストモッドは見た目だけでなく走行性能も重視
クラシックカーの魅力を残しながら現代的な性能を与える「レストモッド」は、今回のSEMAショーでも大きな存在感を放っている。
以前のクラシックカーカスタムでは、派手な塗装やクロームパーツ、大径ホイールなど、外観の美しさが注目されることも多かった。しかし、近年のレストモッドでは、エンジンやシャシー、ブレーキ、サスペンションまで大幅に作り直すケースが増えている。
例えば、Powerhouse Performanceが製作した1974年式フォード・ブロンコは、Roadster Shop製RS4RシャシーにMercury Racing製SB4エンジンを搭載。外観には初代ブロンコの特徴を残しながら、中身はまったく別物といえるほど手が加えられている。
また、フォード・マスタングをベースにしたエレノア仕様のカスタムカーも、クラシックなマッスルカーを現代の高性能モデルとして再構築する好例だ。大型V8エンジンに過給機を組み合わせ、ブレーキやサスペンションを強化。映画で知られる独特のスタイルを、現代のカスタム技術で表現している。
こうしたレストモッドでは、仕上げの精度も重視される。
フェンダーとタイヤのクリアランス、ボディパネルの隙間、エンジンルームの配線、室内のスイッチ類まで、細部の作り込みが完成度を左右する。単に新しいパーツを取り付ければ完成するわけではない。
今回のRoadster Shopブースに並んでいた車両も、そうした考え方を象徴するものだった。
高性能なエンジンや専用シャシーを採用していても、それを外観から強く主張しない。ボディラインやホイールの収まりを整え、全体として自然なスタイルに仕上げる。派手さだけでなく、完成度の高さで勝負するカスタムが存在感を増している。
さらに、アメリカン・モーターズの1969年式ランブラーや、ポンティアック・ルマンなど、比較的珍しいモデルをベースにしたレストモッドも見られた。
人気車種だけでなく、製作者やオーナーが思い入れを持つモデルを選び、自分だけの一台を作り上げる。この自由さもアメリカのカスタム文化ならではだろう。
▲FORD MUSTANG ELEANOR RESTOMOD
1967年式フォード・マスタングをベースに、クラシックなスタイルと現代の走行性能を融合させた「エレノア」。フロリダ州のカスタムショップBurnyzzが製作したレストモッドで、700馬力以上を発揮するコヨーテV8ツインターボエンジンにTremec製6速MTを組み合わせている。足まわりにはPro Touringサスペンション、ブレーキにはBrembo製を採用。
▲1969 AMERICAN MOTORS SC/RAMBLER
アメリカン・モーターズがHurstと共同開発した高性能コンパクトカーをベースに、レストモッド仕様へ仕立てた一台。エンジンにはAMC製390 V8を搭載し、Tremec製TKX 5速MTを組み合わせる。足元には専用製作のホイールとロープロファイルタイヤを装着し、車高も低めに設定。上は同じブースに展示されていた1967年式ポンティアック・ルマン。ネバダ州のRevamped Rides Rod & Customが手がけたレストモッド仕様だ。
往年のホットロッドやラットロッドにも根強い人気
最新の技術を取り入れたレストモッドが注目される一方で、古き良きアメリカンカスタムの世界も健在だ。
その代表といえるのが、錆びたボディやむき出しのエンジンを特徴とするラットロッド。完成された美しさよりも、荒々しさや独創性を前面に押し出すジャンルである。
Hoosier Tireの展示エリアに登場したWelderUp製「The Clown Car」は、その極端な一例だ。
1934年式インターナショナルをベースに、Steve Darnellが製作したラットロッドで、傷や錆を残したボディにピエロのグラフィックを採用。エンジンには496ビッグブロックV8を搭載し、671スーパーチャージャーを組み合わせている。
さらに、荷台には1932年製のコニーアイランドの遊園地用シートを装着。普通のカスタムカーでは考えられないようなパーツを組み合わせ、不気味な移動遊園地を思わせる独特の世界観を作り上げている。
こうしたクルマを見ると、SEMA SHOWが単なるパーツの性能競争ではないことが分かる。
最高出力や加速性能、サーキットタイムといった数値にこだわるカスタムもあれば、製作者の発想やユーモアをそのまま形にしたクルマもある。価値観が異なるカスタムを同じ会場で楽しめることが、SEMA SHOWの魅力につながっている。
また、1930年代から1950年代のクラシックカーだけでなく、1960年代以降のバンやピックアップをベースにしたラットロッドも存在する。
マットカラーやパティーナ仕上げのボディに、大型エンジンや現代の足まわりを組み合わせる。荒々しい外観とは裏腹に、内部には最新のパーツが数多く使われていることも珍しくない。
外観が古く見えるからといって、メカニズムまで古いとは限らない。そこに意外性がある。
▲1934 INTERNATIONAL THE CLOWN CAR
1934年式インターナショナルをベースに、ラスベガスのカスタムショップWelderUpが製作した「The Clown Car」。代表のSteve Darnellが手がけたラットロッドで、錆びたボディにピエロのグラフィックを描き、不気味な移動遊園地を思わせるスタイルに仕上げている。エンジンはむき出しの496ビッグブロックに671スーパーチャージャーの組み合わせ。
日本車の街道レーサーも存在感を発揮!
アメリカのカスタムカーイベントでありながら、日本車の存在感も無視できない。
日産スカイラインやフェアレディZ、トヨタのスポーツモデルなど、かつて日本で人気を集めたクルマが、独自の解釈によってカスタムされている。
NRG Innovationsのブースに登場した日産スカイライン・ジャパンの街道レーサー仕様は、特に目を引く一台だった。
オレンジとシルバーのボディにゼッケン210を描き、大きく張り出したオーバーフェンダーやフロントスポイラー、リアウイングを装着。地面に接するほど低く構えたスタイルは、かつての日本の街道レーサー文化を思わせる。
日本国内では昭和のカスタム文化として語られることが多いが、海外では独特のボディワークやカラーリングを持つカスタムスタイルとして注目されている。
また、フェアレディZをはじめとした旧車のレストモッドも人気だ。オリジナルのスタイルをできるだけ残す方向性もあれば、現代のエンジンやサスペンションを移植し、ハイパフォーマンスカーに仕立てる手法もある。
日本の旧車文化が海外のビルダーによって再解釈され、さらに新たなカスタムへと発展している点は興味深い。
一方、Volkswagenのビートルやカルマンギアなど、欧州のクラシックカーも根強い人気を誇る。
EMPIブースには、1956年式フォルクスワーゲン・ビートルをベースに、往年のレースカーを再現したトリビュート仕様が登場。オレンジのボディにゼッケン9を描き、空冷エンジンを搭載したクラシックなレーシングスタイルを披露した。
Kahuna Bill’sの展示エリアでは、Type One Restorationsが手がけた1955年式フォルクスワーゲン・カルマンギア「Karma」が注目を集めた。初期型カルマンギア特有の美しいシルエットを残しながら、ボディや足まわりを大幅に変更。高い完成度を追求したカスタムで、2026年のグランド・ナショナル・ロードスターショーではAl Slonaker Memorial Awardを受賞している。
派手なワイドボディだけがカスタムではない。車両本来のデザインを大切にしながら、細部の仕上げで魅せるスタイルにも、確かな支持がある。
▲NISSAN SKYLINE JAPAN C210
スカイライン・ジャパンをベースにした街道レーサー仕様。オレンジとシルバーのボディにゼッケン210を描き、巨大なオーバーフェンダーやフロントスポイラー、リアウイングを装着。2018年には英国Top Gear誌でも紹介された一台。
▲1955 VOLKSWAGEN KARMANN GHIA KARMA
Kahuna Bill’sの展示エリアに登場したカルマンギアは、Type One RestorationsのBuddy Haleが手がけた「Karma」。オーナーはDennis Troggioで、初期型ローライトの美しいシルエットを残しつつ、リアフェンダーの拡幅や灯火類の加工など、細部まで作り込んだ一台だ。エンジンは2.4L空冷フラット4で約300馬を発揮。
大馬力エンジンと最新の電子制御が共存
カスタムカーの外観に目を奪われがちだが、SEMA SHOWではエンジン関連の展示にも注目したい。
アメリカンV8をベースとしたハイパフォーマンスエンジンは依然として人気が高く、スーパーチャージャーやターボチャージャーを組み合わせた大馬力仕様が数多く見られる。
特にシボレーのLS系やLT系、フォードのコヨーテやゴジラなどは、クラシックカーからピックアップまで幅広く使われている。
これらのエンジンは社外パーツの選択肢が豊富で、エンジンスワップにも対応しやすい。既存のクラシックカーに最新のV8を搭載するレストモッドが発展した背景には、こうしたアフターパーツ市場の充実がある。
また、エンジン本体の性能だけでなく、制御システムの進化も見逃せない。
独立スロットルを組み合わせた自然吸気エンジンや、高性能ECUによる燃料噴射・点火制御など、最新の電子技術が積極的に取り入れられている。
SnakePit Customsが製作した1987年式シボレー・カマロは、その代表的な一台だ。
Wegner Automotive製LSX 427 V8を搭載し、Harrop製HurricaneインテークやHP Tuners製CORE ECUを採用。さらに6XD製シーケンシャルトランスミッションやRoadster Shop製の足まわりを組み合わせ、本格的なサーキット走行を意識した仕様に仕上げている。

▲1987 CHEVROLET CAMARO
カマロをベースした本格サーキット仕様。エンジンには8000rpmまで回るWegner Automotive製LSX 427 V8を搭載し、Harrop製Hurricane独立スロットルとHP Tuners製CORE ECUを組み合わせる。駆動系には6XD製シーケンシャルミッション、シャシーにはRoadster Shop製FastTrack IRSを採用。足元はForgeline製AL300ホイールにHoosier製Track Attack Pro。

▲DODGE A-SERIES CUSTOM VAN
1960年代のダッジA108とみられるカスタムバン。マットグレーのボディにフレイムスを描き、大径ホイールと極端なローダウンを組み合わせている。エンジンには392 HEMIと呼ばれる6.4L V8をミッドマウント。大型ホイールと低く構えたフォルムが印象的な一台だ。
ホイールとタイヤがカスタムの方向性を決める
SEMAショーに出展するカスタムカーにとって、ホイールとタイヤの組み合わせは重要な要素だ。
オフロード系では35インチ以上の大径タイヤが珍しくなく、ビードロックホイールを組み合わせた本格仕様も多い。一方、ストリート系のカスタムでは、大径ホイールとロープロファイルタイヤを使い、フェンダーとのクリアランスを詰めた低いスタイルが主流のひとつとなっている。
特にピックアップやSUVでは、車高とタイヤサイズの関係がカスタムの方向性を決定づける。
車高を上げて大径タイヤを収めるか、サスペンションを変更して極端なローフォルムを実現するか。ベース車両が同じでも、完成した姿はまったく異なる。
また、カスタムホイールの世界では、デザインだけでなく製造技術も進化している。鍛造ホイールや複数ピース構造、車両ごとにサイズやオフセットを設定する製品など、選択肢は豊富だ。
足元の作り込みからカスタムの方向性を読み取ることも、SEMAショーを楽しむ方法のひとつといえるだろう。


PHOTO|Kazutoshi AKimoto 秋元一利
TEXT|Kazutoshi AKimoto 秋元一利
PUBLISHED|2026
SOURCE|Cal Vol.73
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