過酷な大地でこそ、その真価を発揮する 海外専用モデル“トゥループキャリア”と“ナナマル”|ランドクルーザーの歴史を振り返る

トヨタ・ランドクルーザー|ランクロ

1984年に40系を引き継ぐ形でフルモデルチェンジしたランドクルーザー70系は、まさしくデザイン的により洗練されたことで40系の無骨さこそ失われてものの、パフォーマンス的には何ら遜色の無い高性能4WDとして生産中止となる2004年まで20年にわたって多くのファンを獲得するヒットモデルとなった。

オーストラリアや中東などで新型70系がデビュー

一方、販売が継続されていたオーストラリアや中東などでは2007年3月にボディパネルを一新した新型70系がデビューすることとなる。外観デザイン的に受ける印象は少し後に登場するプレミアムSUVのランドクルーザー200系に近かったものの、メカニズム的には紛れもなく70系譲りのヘビーデューティーさが特徴だったモデルである。

この新しい70系はプレミアムSUVとして豪華さを増す一方だったランドクルーザーの各モデルに対して、オリジナルのキャラクターというべき質実剛健さを持っていたのが特徴である。

最初の70系が日本国内での販売を中止せざるを得なかったのは、当時の新しいディーゼル排ガス規制をクリアするのに時間が掛かりそうだったことが第一。そして70系自体が生産開始から20年で既にモデル末期だったことが理由だ。

もっとも、輸出向けは依然として引き合いは活発であり、その結果フェイスマスク他の外観を一新して登場した。

V8・4.5リッターIC付きターボなどパワフルなラインナップ

70系のエンジンは1984年のデビュー以来、ガソリンもディーゼルも何種類か使われているが、2007年からのモデルで採用されていたのはガソリンが直列6気筒DOHC4.5リッター215psの1FZ型(2009年まで)。V型6気筒DOHC4リッター249psの1GR-FE型の2機種。ディーゼルは直列6気筒SOHC4.2リッター135psの1HZ型。直列6気筒SOHC4.2リッターインタークーラーターボ196psの1HD-FTE型(2006年まで)、V型8気筒DOHC4.5リッターインタークーラーターボ205psの1VD-FTE型である。

いずれも現時点で輸出先での排ガス規制などは全てクリアしている。トランスミッションはいずれのモデルにも5速マニュアルと4速オートマチックが設定されており、これは近年のモデルでも同じだ。

なお2004年に日本国内での販売を終了した70系ながら、2014年8月の70系誕生30周年を記念して輸出用の2007年以降のモデルに準じた4ドアバンと4ドアダブルキャブピックアップが2015年6月受注分まで10ヶ月限定で日本国内発売され人気を集めた。

この時、限定となったのは新しい国内保安基準に適合しなかったことが理由である。70系のホイールベースは歴代で2310mmのショート、2600mmのミドル、2370mmのセミロング、2980mmのロング、3180mmのスーパーロングなどが用意されていた。ボディバリエーションは2ドアソフトトップ、2ドアハードトップ、4ドアハードトップなど多彩であったのは、主要な輸出先だったオーストラリアや中東での用途がハードからソフトまで多岐にわたっていたがゆえでのこと。

海外で人気を集める2ドア・トゥループキャリア

そして近年になって海外では長く親しまれていたものの、日本では極めてマイナーかつ30周年記念でも日本国内で販売されなかったとあるボディバリエーションが人気を集めることとなった。

それはロングホイールベースモデルに用意されていた2ドア・トゥループキャリアである。

トゥループキャリアとは日本語に訳すと兵員輸送車となる。すなわち用途的には軍用車の一種であり、運転席後部の荷室内には向かい合わせのベンチシートが装備されていたのが特徴になっている。

さらに荷室部はハイルーフとなっていたことから、本来は人員輸送のためだった仕様なのにも拘わらず、使い方を工夫すればアウトドアレジャーのためのマルチパーパスヴィークル、もしくはキャンピングカーのベースとして最適というキャラクターにクローズアップされての人気爆発だったというわけである。

トゥループキャリア自体は40系の後期型から70系を通じて輸出仕様には用意されていた伝統あるボディバリエーションであり、同じく日本仕様には無かったピックアップトラック仕様などと同じくあくまで海外での働くクルマだった。

トヨタ・ランドクルーザー|ランクロ

▲かつてのランドクルーザーと大きく異なっている点を挙げるならこのダッシュボードを含めたインテリアに他ならない。この箇所を見る限りオフロード4WDという印象はほとんど感じられない乗用車ライクはデザインである。装備も充実している。

しかし時代を経て世の4WDワゴンの多くがSUVという名と共に乗用車色を強めていったことに満足できないユーザー層の琴線に引っ掛かったのだろう。

ちなみに素のトゥループキャリアのルックスは往年の4WDを思わせるシンプルかつ飾り気の無いものであり、古い年式の個体は装備もそれなりである。

しかし近年のモデルは基本的な装備に過不足は無く、その上でオプションを駆使することで得られる装備自体は多彩であり、結果的に快適性も向上している。後部荷室の向かい合わせベンチシートは片側4人掛けであり、ハイルーフゆえに開放感もある。誕生の動機はまったくの実用モデルでありながら、余裕ある空間を駆使して自分の好みの仕様に仕立て直すには最適のモデルといえるだろう。

オフロード4WDは何と言っても実際にそうするかどうかは別として、このクルマであればどこにでも自由に行けるという夢をユーザーに持たせることに存在意義がある。そういった意味で、トゥループキャリアは21世紀という時代においても多くのユーザーの心に訴えかける要素が大きい一台である。

ILLUSTRATION|JIMMY MASHIKO
TEXT|AKINORI YABUKI
PUBLISHED|2023
SOURCE|LAND CRUISER CHRONICLE Vol.02

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