装備の充実と快適性の向上により ラグジュアリー化していった“ロクマル”|ランドクルーザーの歴史を振り返る

トヨタ・ランドクルーザー|ランクロ

1967年8月にそれまでのロングホイールベースFJ45V 4ドアバンの後継として登場したのがFJ55Vだった。40系ベースの4ドアバンに対して内外装のデザインを一新した本格的なステーションワゴン4WDであり、主に北米市場においてジープ・ワゴニアやインターナショナル・トラベルオールをターゲットにしたランドクルーザーなりの回答だった。

このFJ55Vと日本国内向けマイナーチェンジモデルのFJ56Vは、40系譲りの確かな走行性能に加え充実した内装と装備によって北米では人気モデルとなった。一方で、国内では40系が一般ユーザーの間で人気を得るきっかけともなったディーゼルエンジンの設定が無かったこともあり、この55系はマイナーモデルの域を出ることは無かった。

ディーゼルを採用しなかったのは主要マーケットだった北米でのプライオリティが低かったことが理由である。そして、1980年8月、旧式化した55系に代わる形で投入されたのが60系だ。

ボンネットからフロントフェンダーが独立していた55系に対して、60系はフラットでストレートなボンネット形状が採用された近代的かつ堂々としたフォルムだったのが特徴である。

またボディサイズ自体が拡大されたことと併せてインテリアサイズも拡大されており、居住性の良さについてもそれまでのランドクルーザーとは一線を画していた。

2H型ディーゼルおよび3B型ディーゼルの登場

エンジンはガソリンが直列6気筒OHV4.2リッター140psの2F型と前モデルと同じだったが、新たに直列6気筒OHV4.0リッター110psの2H型ディーゼルと直列4気筒OHV3.4リッター91psの3B型ディーゼルが選択できる様になった。

ステーションワゴンでのディーゼルエンジンは北米他の輸出先では評価が分かれるところではあったが、日本国内では既にディーゼルが市民権を得ていたことから概ね好意的に受け入れられた。

何よりもディーゼルには5速マニュアルトランスミッションが用意されたことで、高速巡航が楽になったと言って良いだろう。5速ミッションは1984年モデルからはガソリンでも選択できるようになったが、この時点でガソリンエンジンは4リッターの3F型へと変更されており、やや高回転寄りのセッティングに改められ最高出力も155psに向上していた。

トヨタ・ランドクルーザー|ランクロ

▲鉄板剥き出しだった40
系に対して60系はパッドを多用した安全姓とクオリティが高いものとなっていた。全体の印象はハードでスパルタンな4WDというよりは明るくクリーンな乗用車に近いものへと大きく変化していた。

内外装のラグジュアリー化

60系は最初からオフロード4WDが基本とはいえラグジュアリー路線を目指し、欧米においては富裕層をターゲットとしていたこともあり、インテリアのクオリティや装備類は次第に充実していくこととなる。

肌触りの良いファブリックのシート生地やパワーウインドウ、パワーシートやサンルーフ(トヨタでの呼称はムーンルーフ)、フルエアミックスエアコンや高品質のオーディオ、シートヒーターなども装備されていった。

これらは最上級グレードのGパッケージで顕著であったが、ビニールレザーシートにシンプルな内装の純然たる仕事仕様も、ちゃんと用意されていた。

一方、メカニカル面での進化は、1985年秋に登場した翌1986年型のトップグレードであるVXに対して2H型ディーゼルを直噴ターボ化した12H-T型が投入される。

最高出力135psのパワフルかつトルクフルなディーゼルは、60系における最強エンジンだった3F型ガソリンにも引けを取らない動力性能を発揮した。またこのモデルにはオプションで前後アクスルに対するデフロックが用意され、少なくともスペック上はオフロード4WDとしてのフル装備となった。

ハイクラスな4WDステーションワゴンへ

これらソフトからハードまでいかなる状況にも対応が可能かつ走行シチュエーションを選ばないという説得力はプレミアム性の高い4WDステーションワゴンにおいて最も重要だったことであり、この段階で60系は世界的に見てもハイクラスな4WDステーションワゴンとしての確固としたポジションを構築することとなる。

こうした一層のプレミアム化は4気筒の3B型ディーゼルの存在意義を希薄なものとしたことから1986年半ばにはラインナップから落とされた。1987年にはマイナーチェンジを実施し、フロントマスクを丸形2灯ヘッドライトから角形4灯ヘッドライトに変更すると共にダッシュボードのデザインが新しくなった。

フロントマスクの変更は賛否両論あったものの、昨今は丸形ヘッドライトのモデルの方が中古車市場での人気は高い。そして1988年、3F型ガソリンエンジンに対して、新たな排ガス規制に対応させるため電子制御燃料噴射装置を導入したことで型式は3F-Eとなった。

あくまで排ガス対策がメインだったことからパワースペックには変化は無かったが、燃費やドライバビリティは向上したと言われている。

1989年10月、60系は生産を終えた。後継となる80系はその前から概要がアナウンスされ乗り換え需要への対応も進んでいたが、逆に60系に対する生産終了前の駆け込み需要が発生。ランドクルーザー60系は丈夫で長持ちという伝統あるブランドイメージと共に確かな走行性能を兼ね備えたプレミアム性を持つ4WDとして、長年に渡って市場での人気を維持した。

それが正しい資質だったということは生産を終えてから30年以上を経過した現在でも高い人気を保っていることからもよく分かる。

ILLUSTRATION|JIMMY MASHIKO
TEXT|AKINORI YABUKI
PUBLISHED|2023
SOURCE|LAND CRUISER CHRONICLE Vol.02

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