人生の意味を再発見する旅に相応しい 愛すべきクラシック・フォルクスワーゲン|1957 フォルクスワーゲン・タイプ 2 ・コンビ・11ウインドウ
家や仕事といった固定的な生活を見直し、旅をしながら暮らすという「バンライフ」。それは人生の意味を再発見するための旅でもある。こうした思想は、かつての「ヒッピー・ムーブメント」とも通じる部分が多く、ヒッピーたちに愛されたフォルクスワーゲン・タイプ2が、「バンライフ」を実践する旅人たちから支持される理由のひとつにもなっている。
「バンライフ」と「ヒッピー・ムーブメント」は思想的に通じる部分が多い。アメリカのベトナム反戦運動や公民権運動を発端とした「ヒッピー」は、若者たちを中心にした反体制運動から生まれ、文化・芸術・思想など多岐にわたるカルチャーと密接に結びつきながら拡大していった。
1963年に開催されたルネッサンス・フェアでは、友人や家族が「ヒッピーバス」と呼ばれるスクールバスを改造した手作りのキャンピングカーで一緒に旅をし、南北カリフォルニアを点々としながら開催地を巡るという新しいライフスタイルも生まれている。
平日はバスを拠点にハンドメイドのアクセサリーを制作、週末はイベントへ参加。会場で販売したアクセサリーの収益で日々の暮らしを営むという生活を楽しんだという。
1969年8月に開催されたウッドストックフェスティバルでも、こうした「ヒッピーバス」の姿があちこちで見られたそうだ。
現在の「バンライフ」は政治的な思想とは無縁だが、少なくともアメリカにおいてはこうした「ヒッピー・ムーブメント」の中で育まれた、“旅をしながら暮らす”というライフスタイルが形を変えて広がっていったものともいえる。
家や仕事といった固定的な生活から脱して、人生の意味を再発見するという考え方は、いかにも欧米的な発想でもある。
よく知られるように、フォルクスワーゲン・タイプ2は、こうした「ヒッピー・ムーブメント」の中で若者たちから圧倒的な支持を受けた車両だ。
サイケデリックなデザインやフラワー・ムーブメントに影響を受けた大胆なグラフィックスなど、「ヒッピー・ムーブメント」の象徴的なクルマとしても扱われてきた。
こうした背景に加え、ウエストファリアに代表されるようにキャンピングキットを架装した「キャンピングカー」が数多く輩出されたこともあり、タイプ2は現代の「バンライフ」においても中心的な車両の1台として人気を博している。
ここで紹介するのは空冷フォルスクワーゲンのスペシャリストである「FLAT4」がレストレーションを行った1957年式のヴィンテージモデルだ。
キャンピングキットこそ搭載していないが、車体はフォルクスワーゲン純正色のドーブブルー(L-31)でリペイント。特に内装には当時の純正パーツが多数残されており、生産当時の貴重なディテールを残しているのが大きな特徴といえるだろう。
気になるパワートレーンは1600ccのニューエンジンへ換装済み。ソレックス製デュアルキャブレターと組み合わせることで、現代の交通状況下でも快適に移動できるようにアップデートされている。
さらに現車にはガソリンを燃料にした燃焼式ヒーターも搭載されている。ドイツに拠点を置くべバスト社製のヒーターは、エンジンを停止した状態でも独立して作動し、車内に暖気を供給してくれる頼もしい存在。数多くのキャンピングカーにも搭載されるなど、車中泊には必須の装備だ。
現車は「バンライフ」のベースとしてはもちろん、コレクタブルなタイプ2を探している人にとっても、食指の動く1台といえそうだ。
ABOUT FLAT4|フラットフォーとは
横浜本牧に店舗を構える空冷フォルクスワーゲン&ポルシェの専門店。車両およびパーツ、アパレルや雑貨などを取り扱っている。数々のコレクションモデルも所有しており、店舗1階には厳選された販売車両も展示されている。
住所|〒231-0827 神奈川県横浜市中区本牧和田12-4
電 話|045-305-6900(自動音声ガイダンス)
営業時間|月~金:10:00~18:00、土・日・祝日:10:00~19:00
定休日|なし(GW休業、夏期休業、年末年始休業除く) ※日曜日も店頭営業
交通|首都高速道路・新山下ICよりクルマで約8分、首都高速道路・本牧埠頭ICよりクルマで約5分
CONTACT|FLAT4
WEB|https://www.flat4.co.jp
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2021
SOURCE|Cal Vol.40