あえてシャッターを設けず実現した大開口のビルトインガレージ

あえてシャッターを設けず実現したビルトインガレージ

自動車趣味を極めるためにも、どうしても欲しいガレージ。愛車をしまい込んでおくスペースとして使うだけではもったいない。長崎県佐世保市に建築されたM邸は、スポーツバーのようなバーカウンターや隠れ家スペースを併設した、開放感のある多目的スペース。庭でバーベキューを楽しむような、アメリカンスタイルの休日を楽しめる家だ。

あえてシャッターを設けず実現したビルトインガレージ

▲10メートル近い大開口を誇るガレージには、ちょっとしたくつろぎスペースとして活用できるリビングセットを配置。いつでも愛車を眺めることのできるポジションにソファを置いてある。

1964年に発表されたエポックメイキングなスポーツカー、フォード・マスタング。

初代モデルは手頃な価格帯で購入できるコンパクトなスポーツカーとして人気を博し、記録的な売上を達成。半世紀を超えた今でも熱心なファンを数多く抱える名車として知られている。

1969年にはビッグマイナーチェンジが施され、ホイールベースを含めてボディサイズを拡大、ラグジュアリーなスペシャルティカーとして再登場した。

その貴重な初代モデルのコンバーティブルを収めたガレージハウスが、長崎県佐世保市の郊外に建っている。

あえてシャッターを設けず実現したビルトインガレージ

▲鉄筋と石材を組み合わせた外構は「ガビオス」や「バスケットガーデン」とも呼ばれる「蛇篭(じゃご)」。鉄筋で組んだ網の中に割栗石を入れて、スタイリッシュな外壁として使用している。

佐世保を拠点とする「LAX DESIGN」が手がけたこの家は、市内で飲食店などを経営するMさんの住まいとして3年前に竣工したもの。

300坪という宅地としてはかなり恵まれたスペースに、ゆとりを持った形で平屋のガレージハウスが建築されている。

フルサイズのアメリカ車を横に2台並列で停められるガレージは、あえてシャッターを省いたオープンスペース。本来ならもう1台クルマが入る場所に、リビングセットを設置し、ちょっとしたくつろぎのスペースとして利用している。

あえてシャッターを設けず実現したビルトインガレージ

▲M邸のガレージ内に設けられたバーカウンター。手前にあるのは手軽に本格的なバーベキューが楽しめる専用のグリル。壁の向こう側はガレージ内の専用トイレ。

パーキングスペースの奥にはテレビモニターを吊り下げたバーカウンターも設置。さらに、その奥には寝泊まりもできる、まるで“隠れ家”のような居室も設けられている。

これらのガレージスペースは母家とひと繋がりの空間として設計されており、木造軸組構法で建築されたが、10メートル以上のスパンを誇るガレージの開口部には特に苦労したという。

じつは建築当初は中央に柱を入れていたのだが、クルマの出し入れの際に邪魔になるということから、施主の希望で撤去。代わりに開口部をすべて鉄骨で組み直して期待される強度に再設計されたそうだ。

あえてシャッターを設けず実現したビルトインガレージ

▲母家側に設けられたオープンテラスは、もうひとつのアウトドアリビング。軒が高く作られているが、これは屋根の上に取り付けたソーラーパネルの目隠しを兼ねている。

M邸にはもうひとつ、屋外に屋根付きのオープンテラスが設けられており、広々としたガレージ部分と共に、友人たちを招いたバーベキューの際などに活躍している。

基地関係者に人気の飲食店も経営しているというオーナーは、普段からアメリカの文化・慣習にも慣れ親しんできた。このため、休日の過ごし方も自然とアメリカンスタイルへ。

ガレージの脇にはルート66のロードサインも掲げられ、素晴らしいコンディションを誇るマスタング・コンバーティブルと共に、M邸のシンボルとして存在感を放っていた。

あえてシャッターを設けず実現したビルトインガレージ

▲1969年のビッグマイナーチェンジにより、ラグジュアリーなスペシャルティカーへと進化した初代後期モデルのマスタング・コンバーチブル。6年ほど前に手に入れたという個体がM邸ガレージの主役である。


CONTACT|LAXDESIGN
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2023
SOURCE|Cal Vol.51
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