マイク・ゼンザミチ氏所有のGMC・シルバーサイドは、アメリカの長距離バスの代名詞的存在グレイハウンド社のバスをベースにしたキャンピング仕様だ。
グレイハウンド社は言わずと知れたアメリカ最大規模のバス会社。アメリカ全土に数多くの路線をもつ同社は、1世紀以上の歴史を誇る。グレイハウンド・バスに乗ってアメリカを旅した読者もいることだろう。
グレイハウンド・バスをキャンピング・バスにする。この大胆な試みは、とても魅力的だ。ルートも時間も関係なく、グレイハウンドで自分の行きたい場所に行き、グレイハウンドで一夜を過ごす。それもシートで小さくなってではなく、広々としたベッドで。なんてすばらしい時間なんだろう! ただのバスのカスタマイズでもすごいが、グレイハウンドは旅情を駆り立てるパワーが違う。そう、その外観がオリジナルを保っていることがまた、すばらしい演出になっているのだ。
GMC製のこのバスだが、内装は1959年にカスタマイズしたとオーナーは語る。後部には8つのベッドが設置されたベッドルーム、中央部はクルーズトレインばりのテーブルとシート、そして前部にはキッチン。上質な時間は約束されたのも同然の装備にも圧倒される。フロントグラスには「Sorry WE’RECAMPING」と書かれたカードが見える。もちろん、営業運行中のグレイハウンドだとは誰も思わないだろうが、このバスがロードサイドに止めてあったら、それと知っていてもきっと乗り込みたくなってしまうに違いない。
大胆な発想力とユーモアのセンス。アメリカならではのキャンピング・バスに出会えたのは、とても幸運な体験だった。
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|Cal
PUBLISHED|2017
SOURCE|キャンプ・グッズ・マガジン Vol.1