「senkiya」を訪ねて

「KAWAGUCHI SHINMACHI」の敷地内で恊働するアーティスト、職人の 皆さん。向かって右端が「senkiya」のご主人である高橋さん。

「KAWAGUCHI SHINMACHI」の敷地内で恊働するアーティスト、職人の
皆さん。向かって右端が「senkiya」のご主人である高橋さん。

川口の北部で「千木屋」は、代々植木屋を営んできたそうだ。ところが、敷地の一角に残っていた倉庫を、知り合いのVWファクトリー「シルバーレスト」に貸したのが始まりだったという。その後、カフェと雑貨屋をスタートし、母屋を改装した「senkiya」がオープン。後は革工房や観葉植物屋、建築設計事務所、コーヒーロースターに本屋やCDショップなどが続々と店を構え、「senkiya」を中心にちょっとした町が出来上がっている。

敷地内には川口特有のほっこりとした空気が流れているが、アーティストでもあり、職人でもある各店舗の主が、それぞれの仕事場でピリリとした表情で仕事をこなしている。

手仕事の革細工、1か月に7日間しか営業しない洋服屋、豆と焙煎に徹底的に拘ったロースターなどなど、どこも大量生産とは無縁の手作り感あふれる仕事ぶりである。

そんな、“ほっこり”と“ピリリ”が同居する中で、独特の空気が生まれ、時が流れていく。気が付くと焙煎された珈琲豆の匂いに包まれながら、すーっと深呼吸してしまう自分がいる。どこか懐かしい、昭和の空気。そんな雰囲気にあこがれてお客はやってくる。

いや、「senkiya」にやってくる女性たちの舌は、そんなに感傷的ではない。じつは、日替わりで賄い役が代わるランチが大好評なのだ。一品しかないランチメニューは、数量も限定で、用意数がなくなり次第終了する。取材した当日は、“okatte sun!”のランチの日。おでんの三種盛に、たらこちくわチーズの焼春巻と、ベビーリーフに水菜のサラダ。プレートからあふれて落ちてしまうそうな麦入りごはんの脇には、ひじきとごぼうの煮物が添えられていた。

昭和な佇まいのカフェの中には、いつまでもお客さんたちの笑い声が響いている。ここは「senkiya」。埼玉県川口市の郊外にある、どこか懐かしい場所。人はこの小さな町を、「KAWAGUCHI SHINMACHI」と呼ぶ。

[ senkiya ]
Address: 埼玉県川口市石神715
Phone: 048-299-4750
URL: http://www.senkiya.com/

PHOTOGRAPHS|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
SOURCE|Cal Magazine #05

※編集部注:本記事はCal #05に掲載された記事を一部抜粋したものです。


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