Good old america|田舎町だからこその出会いも楽しみのひとつ

ROUTE66

ローカルハイウェイの魅力のひとつとして、忘れてはならないのが町で暮らす人々との出会いだ。仕事柄、特に思い出深い人物は警察官であることが多い。日没後にカメラを抱えて撮影していたり、道端で寝っ転がってカメラを構えていたりすると、すぐに警察官が来るのはさすがアメリカ。もちろん、事情を話せば事なきを得るのだが、こちらも仕事なのでどうせなら、と撮影をさせてもらうことが多い。

2001年7月にカリフォルニア州ニードルズで出会った警察官は特に印象深かった。夜遅い時間に町中で撮影をしていると、案の定警察官がやってきて職務質問されたのだが、事情を話すと「もっといい場所があるから着いてこい」というのだ。その時に連れて行かれたのが「66モーテル」の看板である。

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▲2001年7月、深夜のニードルズで出会った警察官。職務質問の後、我々を「66モーテル」の看板まで案内してくれた上、撮影が終わるまで見守ってくれた。

田舎町とはいえ、深夜の撮影はやはり不安になることが多いが、警察官と一緒となれば話は別。たっぷりと時間をかけて撮影している間、彼はパトロールカーの中でずっと我々を見守ってくれた。

後年、「Route66 & U.S. Highway(ネコ・パプリッシング刊)」という本にその時の写真を掲載。発刊後、たまたま近くを通る機会があり、ニードルズの警察署まで出来上がった本を持って挨拶にいったのだが、残念ながらパトロール中の彼には出会えず、同僚の警察官に本を託した。

ローカルハイウェイの沿線にあるような田舎町で暮らす人々は、いつも旅人たちを温かく迎えてくれる。そこには、ロサンゼルスやニューヨークではあり得ない“アットホームな出会い”がある。

ROUTE66

▲ニードルズの街中に残る「66モーテル」の看板。写真は2001年7月に撮影したもの。ちなみに一番上の写真と下の写真は2022年11月に撮影。

66 Motel
91 Desnok St, Needles, CA 92363
辺境の街、ニードルズは総延長2万1107kmを誇ったアメリカ最大の鉄道会社サンタフェ鉄道の建設時に、作業員の宿泊場所として開かれた町だ。鉄道の開通後は旅行者向けの宿場町として栄え、ルート66制定後は西進する人々が夢に描いた新天地カリフォルニア最初の町として賑わった。「66モーテル」は、そのニードルズの町中にある。1946年にオープンしたという古いモーテルは、すでに営業はしていないが、かつての看板はルート66の保全活動の一環から修復され、乾いた大地で背筋をしっかりと伸ばすように立っている。ちなみに、「66モーテル」の背後にある空き地は、前述した映画『怒りの葡萄』でジョード一家が泊まる「カーティのキャンプ」のロケ地として使用された。

ROUTE66

▲1946年にオープンしたという「66モーテル」の看板。2022年11月に撮影。

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2022
SOURCE|Cal Vol.50


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