セマショー 2026(SEMA SHOW 2026)|ウエストホールが示したカスタム文化の新潮流
- 2026/11/6
- CAR
- SEMASHOW2026, セマショー2026

巨大なオフロードマシンが並ぶ一方で、個性豊かなカスタムバイクが存在感を放つ。2026年のSEMAショーでは、これまでとはひと味違う光景が広がっていた。世界のパーツメーカーやビルダーが集うこの舞台で、いま何が起きているのか。大きな転換点を迎えたウエストホールを歩き、その最新事情と見どころを探ってみた。
▲MITSUBISHI MOTORS
三菱自動車は14年ぶりにSEMAショーへ公式出展し、オフロード性能を強調したカスタムカーなど計6台を披露。ブースにはアジアクロスカントリーラリー(AXCR)で総合優勝を果たしたトライトンの競技車両をはじめ、東京オートサロン2026でも公開された「デリカD:5 Ultimate Gear」を展示。さらに、北米向け新型アウトランダーのオフロード仕様「Diamond Trail Edition」を世界初公開した。リフトアップや大径タイヤ、ルーフテントなどを装備した車両を通じて、三菱自動車が得意とする悪路走破性とアウトドアへの対応力をアピールした。
2026年11月3日から6日まで、ラスベガス・コンベンションセンターで開催されたSEMAショー。今年の会場で大きな変化を感じさせたのが、ウエストホールだ。これまでピックアップトラックやSUV、オフロード関連の展示が中心だったこのエリアに、二輪車やパワースポーツ関連のブースが本格的に加わった。カスタムカーの祭典として発展してきたSEMAショーが、四輪車の枠を超え、アウトドアやモーターサイクルを含む幅広いカスタム文化へと領域を広げたのである。
その象徴が、新たに設けられた「Powersports / SxS / Lifestyle」エリアだ。モーターサイクルやダートバイクに加え、SxSと呼ばれる小型のオフロード四輪車、トレーラー、アウトドア用品などを集め、従来のトラック・オフロード関連ブースと隣接させた。単に展示ジャンルを増やしただけではない。オフロード車でキャンプへ向かい、現地ではバイクやSxSを楽しむ。そんな北米のレジャースタイルを一つの会場で提案する構成となっている。
SEMAが打ち出した新展開
SEMAがこの分野に注目した背景には、カスタムカーとパワースポーツのユーザー層が重なっていることがある。ピックアップの荷台にバイクを積み、トレーラーでSxSを運び、アウトドアでの遊びに合わせてクルマをカスタマイズする。こうした楽しみ方を考えれば、両者の関係はもともと深い。ウエストホールの展示構成は、そのつながりをより分かりやすく見せるものだった。
新エリアで大きな存在感を示したのが、ハーレーダビッドソンだ。ウエストホールに大型ブースを構え、オレンジやピンクなどの鮮やかなカスタムバイクを展示。会場には「RIDE」を大きく掲げ、同社が長年培ってきたレースやパフォーマンスの歴史を紹介するとともに、カスタマイズによる自己表現の楽しさをアピールした。
ハーレーダビッドソンにとって、カスタムは単なる付加価値ではない。マフラーやハンドル、ホイール、外装パーツなどを交換し、オーナー自身の好みに仕立てることが、ブランド文化の重要な一部になっている。そうした意味でも、多数のアフターマーケットメーカーが集まるSEMAショーとの相性は抜群だ。完成車だけでなく、それを作り上げるパーツや技術に目を向ける来場者にとって、今回の出展は二輪カスタムの奥深さを知る機会になった。
さらに、二輪車メーカーのカワサキや、ヘルメット関連ブランドなどもパワースポーツ分野の存在感を高めた。エンジンや足まわりのチューニングだけでなく、安全装備やライディング用品、日常での使い勝手を高めるアクセサリーまで、カスタムの対象は幅広い。四輪車の部品を扱ってきたショップにとっても、隣接する新しい市場を知るきっかけになったといえる。
▲POWERSPORTS / MOTORCYCLES
2026年のSEMAショーで大きく変わったのが、二輪車関連の展示を強化したことだ。ウエストホールには「Powersports / SxS / Lifestyle」の専用エリアを新設し、ハーレー・ダビッドソンやカワサキなどが出展。さらに、カスタムカーコンテスト「Battle of the Builders」にも二輪車部門「Bike Builder Shootout」が追加されるなど、ショー全体が大きく変化した。
Battle of the Buildersに二輪車部門が新設
展示の拡充と並ぶ大きなニュースが、カスタムカーコンテスト「Battle of the Builders」に二輪車部門が新設されたことだ。「Bike Builder Shootout」と名付けられた新カテゴリーでは、全米各地のビルダーが手がけたカスタムバイクを対象に、製作技術やデザインの独創性、完成度などを審査。これまで四輪車のビルダーが主役だったコンテストに、二輪車の製作者も正式に加わることになった。
初開催となったコンテストでは、ハーレーダビッドソンのパンヘッドやナックルヘッド、インディアンの直列4気筒モデルなど、さまざまな時代の車両をベースにした作品が上位候補に選ばれた。トップ3に残ったのは、James Crosbyのハーレーダビッドソン・パンヘッド、Steven Iaconaのナックルヘッド、Robert Zeollaのインディアン直列4気筒。クラシックなエンジンや造形を現代の技術で作り込んだ車両が評価され、二輪カスタムならではの職人技が脚光を浴びた。なお、審査結果の発表はセントラルホールの専用ステージで行われており、新エリアの設置とあわせてショー全体で二輪車の扱いが拡大されたことが分かる。
会場で見かけたヴィンテージレーサーも印象的だった。ゼッケン72を付けた一台は、1942年式ハーレーダビッドソンFLのナックルヘッドエンジンを搭載し、ユタ州のボンネビル・ソルトフラッツで最高速に挑んだマシンだ。低く構えた車体に小ぶりなフロントカウルを備え、装飾を排して速度を追求した姿は、華やかなショーバイクとは対照的。展示資料には最高速度139mph(約224km/h)と記されていた。古いエンジンを使いながら、現在も記録に挑戦するという楽しみ方も、アメリカのモーターサイクル文化を象徴している。
▲1942 HARLEY-DAVIDSON FL KNUCKLEHEAD
ボンネビル・ソルトフラッツの最高速競技に挑むヴィンテージレーサー。1942年式ハーレーダビッドソンFLのナックルヘッドエンジンを搭載し、空気抵抗を抑えるフロントカウルや低いライディングポジションが特徴。オーナーはAtsushi Yasui、製作はMike Silvio(Cycles Mos)が担当。
ウエストホール本来の主役は、あくまでも4WD
もちろん、ウエストホール本来の主役であるオフロード車の展示も健在だ。2026年はMoparが従来のサウスホール1階からウエストホールへ移り、ジープを中心としたコンセプトカーを披露した。なかでも注目されたのが、ラングラーをベースにした「ANVIL 715」と「Buzzcut Concept」だ。ANVIL 715は軍用ジープを思わせる力強いフロントマスクを採用し、6.4L HEMI V8を搭載した本格的なオーバーランド仕様。一方のBuzzcut Conceptは、2ドアラングラーのルーフを約2インチ低く加工し、後傾したフロントウインドーとファストバック形状で独特のシルエットを生み出している。
SRTが発表した「Wrangler Scrambler SRT Concept」も、ジープの可能性を広げる一台だ。1980年代のCJ-8スクランブラーを現代風に再解釈したピックアップスタイルで、最高出力470馬力の6.4L HEMI V8エンジンを搭載。フロントには専用の独立懸架式サスペンションを採用し、高速で砂漠を走るデザートレーサーとしての性能を追求した。後席は180度回転や取り外しができ、乗員の移動から荷物の積載まで幅広く対応する。単なる復刻車ではなく、現在の技術でジープの新たな用途を提案するコンセプトカーとなっている。
オーストラリアのARBも大型ブースを設け、バンパーやサスペンション、キャノピー、収納システムなどを紹介した。展示車両のフォードF-250 Platinumには、Old Man Emu製サスペンションによる3.5インチのリフトアップをはじめ、荷物を効率よく積載するための装備を搭載。オフロード走行だけでなく、長距離のキャンプや冒険を快適に楽しむためのカスタマイズを提案していた。
▲JEEP WRANGLER “SCRAMBLER SRT CONCEPT”
1980年代のジープCJ-8スクランブラーを現代風に再解釈したコンセプトモデル。ラングラーのシャシーをベースに、フロントウィンドウ後方からボディを大幅に作り替え、専用の荷台を設けている。エンジンは最高出力470馬力を発生する6.4L HEMI V8を搭載。フロントには独立懸架式サスペンション、リアにはトロフィートラック風の足まわりを採用し、37インチのBFGoodrichタイヤを装着。後席は180度反転や取り外しが可能。
▲JEEP WRANGLER “BUZZCUT CONCEPT”
Moparブース(Stellantis傘下のジープ、ダッジなどに向けた純正部品やアクセサリーパーツやパフォーマンスパーツを展開するブランド)には、ラングラーの2ドアモデルをベースにした「バズカット・コンセプト」を展示。最大の特徴は、ルーフを約2インチ(約51mm)チョップし、フロントウインドーを後傾させたファストバックスタイルだ。
▲2026 JEEP WRANGLER “ANVIL 715”
例年サウスホール1階に出展していたMoparは、2026年のSEMAショーでウエストホールへ移転。ブースの規模と演出を一新し、ジープやダッジ、ラムのコンセプトカーを華やかに展示した。注目の「ラングラー・アンヴィル715」は、ラングラー・アンリミテッド ルビコンをベースに、1960年代の軍用ジープを思わせるフロントマスクを採用。6.4Lの392 HEMI V8エンジンを搭載し、スカイライト付きの専用ルーフや一体型ルーフラック、車載エアシステム、専用バンパーなどを装着。長距離のオーバーランドを想定した一台だ。

▲JEEP GLADIATOR “WARN EVO”
WARNブースには、ジープ・グラディエーターをベースにしたオフロードカスタムを展示。ホワイトのボディにカラフルなグラフィックを施し、フロントには新作のWARN製ウインチとFACTOR 55製フェアリードを組み合わせる。荷台は専用のフラットベッドに変更され、リカバリーロープやシャックル、工具などのレスキュー装備を搭載。足まわりには大径オフロードタイヤとブラックのホイールを装着し、ルーフには補助ライトも備える。ウインチを中心としたリカバリー用品の実用性をアピールする。
74WELDのポータルシステムに注目!
オフロードカスタムの新たな潮流として注目したいのが、74WELD製ポータルシステムだ。これはフロントのステアリングナックル部分を換装するパーツで、内部に減速ギアを組み込み、車軸の位置をホイール中心より高くすることで、最低地上高を拡大する構造。BAJA 1000におけるトロフィートラックのリダクションギアをヒントに開発されたパーツだ。
従来のリフトアップとは異なり、サスペンションのジオメトリーを大きく変えずに車高を引き上げられるのが特徴で、2026年のSEMAショーでは、FOXブースのフォード・レンジャー・ラプターや、フォード・レーシングが披露したブロンコ・フロストウォーデンにも採用されていた。
74WELDのブロンコ/レンジャー・ラプター用は、約98.5mmのリフト量とハブ部分での22%の減速比を実現。大径タイヤの装着と駆動系への負担軽減を両立する技術として、今後のオフロードカスタムで存在感を高めそうだ。
こうした展示を見ていると、オフロードカスタムの方向性も変化していることに気づく。かつては大径タイヤやリフトアップによる迫力あるスタイルが注目されがちだったが、近年はルーフトップテント、収納ボックス、電源設備、照明など、オーバーランドスタイルの人気が高まっている。車両の性能だけではなく、そのクルマで何を楽しむのか。そんな視点が、ウエストホールの各ブースに共通していた。
2026年のSEMAショーにおける二輪車部門の強化は、そうした流れの延長線上にある。カスタムトラック、SUV、モーターサイクル、SxS、キャンプ用品。それぞれ別の分野に見えても、共通しているのは自分の好みに合わせて乗り物を作り上げ、日常とは異なる体験を楽しむという考え方だ。パーツメーカーやビルダーが分野を越えて交流できることも、このイベントならではの魅力だろう。
二輪車専用エリアの新設と「Bike Builder Shootout」の誕生によって、2026年のSEMAショーは新しい段階へ踏み出した。ウエストホールは、単にオフロード車が集まる場所から、さまざまな乗り物とアウトドアライフを結びつける展示エリアへと進化している。四輪と二輪の垣根を越え、カスタムの可能性をさらに広げていく。その変化こそ、今回のSEMAショーで最も注目すべき出来事のひとつだった。

▲FORD RANGER RAPTOR “FOX × 74WELD”
FOXブースには、フォード・レンジャー・ラプターをベースにしたオフロードカスタムを展示。足まわりには74WELD製ポータルシステムを採用し、ステアリングナックル部分をそっくり換装するパーツで、サスペンションアームやドライブシャフトの角度を大きく変えずに、最低地上高を拡大できる。通常のリフトアップでは、車高を上げるほどアームやドライブシャフトの角度が急になり、ジョイントへの負担が増える場合があるが、ポータルシステムは車輪のハブ部分で車軸をオフセットするため、こうした問題を抑えられる。また、内部に減速ギアを組み込んでいるのも大きな特徴。大型タイヤの装着を可能にしながら、駆動系への負担も軽減できる。
▲FORD BRONCO “FROSTWARDEN”
極寒地での捜索救助活動をイメージしたフォード・ブロンコのコンセプトカー「フロストウォーデン」。最大の特徴は、3.0LのWhipple製スーパーチャージャーを組み合わせた7.3L V8エンジン「Megazilla 2.0」で、最高出力1200馬力以上を発生。足まわりには74WELD製ポータルギアリフトとBilstein製ショックを採用し、18インチのWELD製ビードロックホイールに42インチのBFGoodrich製タイヤを装着。ルーフにはスペアタイヤや救助用装備を搭載し、雪上での走破性と救助活動への対応力を追求している。
【セマショー2026記事一覧】
https://calog.net/archives/tag/semashow2026
PHOTO|Kazutoshi AKimoto 秋元一利
TEXT|Kazutoshi AKimoto 秋元一利
PUBLISHED|2026
SOURCE|Cal Vol.73
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