EDITORS COLUMN|半ソトの誘い

半ソト

「カバードポーチ」をはじめ、「テラス」や「ベランダ」「バルコニー」など、屋内と屋外を繋ぐ半分屋外、半分屋内というスペースを、僕は「半ソト空間」と呼んでいる。多い年はカリフォルニアやハワイを中心に毎年50 〜60 軒の住宅を取材・撮影してきたが、そこに住む人々はこうした半ソト空間を住まいの中へ上手に取り込んでいた。

半ソト

カリフォルニアでは数kmにも及ぶ海岸線にびっしりと家が並んでいる住宅エリアがある。ニューポートビーチなどがその典型的な例だが、どの家も「海」を望む位置に、必ずといっていいほど「テラス」や「ベランダ」といった半ソトの空間がある。

内陸側でも「カバードポーチ」のような半ソト空間がポピュラーな存在だ。玄関ポーチとひと繋がりとなったウッドデッキを軒下に配置したカバードポーチは、住宅のファサード、つまり正面側に配置している例が多い。時にはデッキ上でおばぁちゃんがロッキングチェアを揺らしながら、日向ぼっこをしているという光景に出会うこともあった。

ハワイではこうした半ソト空間を「ラナイ」と呼んでいる。大抵はテラスやベランダに網戸や簡易的な窓を備えた構造になっており、雨の日でも風が通り抜ける涼しい空間になっている。テーブルやチェアを置いている家も多く、アウトドアダイニングとしての機能を持たせたり、デイベッドを置いてお昼寝できるようにしたラナイもある。

こうした場所で現地の人々は、キルトを縫ったり、レイを作ったり、思い思いが好きなことをやってまったりとした一日を過ごしているのだ。

半ソト

このように海外の例をあげていると、半ソト空間というのは、日本の生活様式の中ではちょっと縁遠い存在のように感じてしまうかもしれないが、じつは昔ながらの日本家屋にも、屋内と屋外の中間にあるような“半ソト”のスペースがあった。それが「縁側」だ。

縁側は家の中と外の中間に位置した緩衝スペースとして使われてきた。農家ならちょっとした作業場所として使うこともあったし、縫い物や編み物をしたりする主婦も少なくなかった。また、縁側は家主とご近所を繋ぐコミュニケーションスペースとしても活用されてきた。

来訪する側は玄関から入るとなると心理的にもハードルが上がるが、縁側だと気軽に家主へ声をかけやすくなる。家主も家に上がり込まれるのは困るだろうが、縁側ならお茶を楽しみながら世間話もしやすいというものだ。カバードポーチも、昔ながらの縁側のように気軽にご近所さんやお友達を呼べるコミュニケーションスペースとして活用することができる。

半ソト

もちろん、サーフィンの道具を置いたり、自転車を整備したり……と、趣味に興じるのもいいだろうし、雨の日は洗濯物を乾かすという実用的なスペースとしても優れている。

住まいの中には色々な役割を持ったスペースがある。調理をするキッチンに、食事をするダイニング、寝るためのベッドルームなど、それぞれ明確な役割が与えられているが、半ソト空間にはそんな役割がない。だからこそ、オーナーの暮らし方に合わせて自由な使い方ができるのかもしれない。

海沿いに住まいを構えている人は、やっぱり海が大好きだ。西海岸ではサンセットの時間になると、どこからともなく人が現れ海岸に集まってくる。何かをするわけでもなく、夕日が水平線に沈んでいくのをただ眺めているのだ。ビーチフロントに建つ家の場合は、同じことを自宅のバルコニーやテラスといった半ソト空間で楽しんでいる。

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CONTACT|GL HOME
WEB|https://www.glhome.lixil-jk.co.jp/
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2023
SOURCE|Cal Vol.53

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