Good old america|新天地カリフォルニアを目指した命懸けの大冒険 。ゴールを目前にした最後の難関がモハベ砂漠だった

Roy's Motel & Café (Amboy)

ルート66をテーマにした映画・テレビは数多い。特に1960年代に放映されたテレビドラマ『Route66』は、大学を卒業した若者たちがシボレー・コルベットに乗って旅をするという、まさに黄金期のアメリカらしいストーリーとして人気を博した。このドラマは日本国内でも1962年に地上波で放映されており、ルート66とアメリカンカルチャーを重ね合わせた作品としてよく知られている。

Roy's Motel & Café (Amboy)

近年ではジョン・ラセター監督によるディズニー映画『Cars(邦題:カーズ)』も、やはりアメリカ西部のルート66を舞台背景にしている。アリゾナ州ホルブロック(Holbrook)周辺では劇中に登場するコーンモーテルそっくりのモーテル(Wigwam Motel)もあり、映画の世界をリアルに体験することができるだろう。

もうひとつ、ルート66が制定されたばかりの1930年代のアメリカをよく表している作品として知られるのが、1940年に製作されたジョン・フォード監督による映画『The Grapes of Wrath(邦題:怒りの葡萄)』だ。

華やかさとは縁遠い、社会派のまるでドキュメンタリーのような作品ではあるが、劇中ではルート66を使って中西部オクラホマから新天地カリフォルニアへ向かう人々の命を賭けた大移動が描かれている。

原作はジョン・スタインベックによる小説であり、世界恐慌とダストボウル(砂嵐)による凶作で農地を失った貧しい一家が、新天地を求めて西へ向かう日々を綴った物語だ。オンボロのフォード製トラックに祖父母を含めた家族全員と全財産の家財道具を乗せたトム・ジョード一家がカリフォルニアを目指した旅は、幾多のトラブルに遭遇しながらも、必死に新天地を目指すという、まさに決死の大移動であった。

モータリゼーションが花開いたばかりの1930年代、ルート66全行程4000kmはもちろんのこと、オクラホマからカリフォルニアへと至る2400kmであっても、文字通り“命懸けの大冒険” だった。

「ロイズ・モーテル&カフェ」があるのは、そのモハベ砂漠の真ん中。人家の一切ない荒野の一本道を走っていると、どんなに旅慣れていても不安になり、額からじわりと汗が滲んでくるような場所である。

まさに“地の果て”ともいえるこのモハベ砂漠は、真夏の最高気温が40℃に迫ることもあるという過酷な大地。干からびた荒野をがむしゃらに走っていると、蜃気楼の先にジョード一家のオンボロトラックがタイヤを軋ませながら走っていく姿が、脳裏に浮かんでくる。

Roy's Motel & Café (Amboy)
Roy’s Motel & Café (Amboy)
87520 National Trails Highway,Amboy,CA 92304
今でこそ、まるでゴーストタウンのようにも見えるアンボーイだが、かつてはルート66沿いの宿場町のひとつとして栄えた時代もあった。1940年代には13の店舗が軒を並べ、3つのガソリンスタンド、2つのカフェ、郵便局や教会、学校まであったというから驚きだ。ガソリンスタンドの裏手には未舗装の空港もあり、2019年には全米から航空機が集まって「Amboy Fly-In」というイベントも開催された。なお、掲載した写真は上から1〜2枚目は2022年11月に撮影したもの。3枚目の上の写真は1990年代に撮影した20年以上前のRoy’s Motel & Café。よく見ると、ガソリンスタンドの1ガロンあたりの単価が$2.99から$7.59へと2倍以上になっていることがわかる。

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2023
SOURCE|Cal Vol.50


関連記事

AD

ページ上部へ戻る