ゆっくり走って、時々遠回り。20年前の写真で振り返るローカルハイウェイの旅

US HIGHWAY

1912年に制定された「ナショナル・オールド・トレイルズ・ロード(National Old Trails Road)」によって、アメリカ合衆国には初めて東西を結ぶ横断道路が完成した。メリーランド州ボルチモアからカリフォルニア州ロサンゼルスを結んだその道は総延長3096mile(4983km)という壮大なものではあったが、ルートの大半は未舗装であった上、本格的なモータリゼーションの到来を前にしたアメリカにおいては、まだまだ十分に活用されるものではなかったようだ。

その後、1926年に制定された米国高速道路システム(Numbered Highway System)により、USハイウェイ(国道)が整備され、250以上の国道が生まれたが、こちらも、その大半は新設されたものではなく、各地方で無秩序に整備されてきた道路を繋いで国道としただけであった。南北ルートを奇数番号、東西ルートを偶数番号とする番号付けのルールも、この時に採用されている。

日本語の高速道路に匹敵するアメリカのインターステート・ハイウェイ(以下IH)が生まれるのはさらに後年である。

1956年に計画され、自動車専用の高速道路として建設が始まったIHは、1992年に当初計画分を完成させ、総延長6万8500kmに及ぶ高速道路網ができあがった。

こうした自動車専用の高速道路の完成によって、アメリカの文化・物流は国の隅々にまで行き渡るようになっていったが、その一方で忘れ去られるように衰退していったのがUSハイウェイと、その沿線にある町々だ。

USハイウェイ66(ルート66)もそのひとつであり、新設されたIHが町の外側を大きく迂回したことで国道沿いの宿場として栄えていた町への流入は極端に減っていった。国道や、その沿線にある町に、哀愁を感じさせる“古き良きアメリカ”が残されているのは、こうした理由による。

アメリカ旅行を楽しむ機会があれば、ぜひともこのような国道沿いの町を訪れてみてほしい。初めてアメリカを訪れた1993年、アリゾナの片田舎で出会ったシェリフが語った言葉が、今も忘れられない。

「アメリカの魅力はロサンゼルスやニューヨークだけにあるわけじゃない。もっと田舎へ行ってみてくれ。アメリカ人でさえ忘れてしまった、本当のアメリカがそこにはあるはずだから」。

ローカルハイウェイ、つまり地方の国道沿いには、今も都市部では味わえない、昔ながらのアメリカが残されている。

なお、写真は1998年にネバダ州オースティンの東で撮影したもの。ルート50はルート66と同じく、1926年に制定された国道のひとつ。メリーランド州オーシャンシティからカリフォルニア州サクラメントを結び、総延長4946kmを誇った。西部エリアではルートの大半が砂漠であることから“The Loneliest Road in America(アメリカで最も孤独な道)”とも揶揄された。

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2022
SOURCE|Cal Vol.50


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