北欧フィンランドで愛されるラーヴを再現した木造の小屋

北欧フィンランドで愛されるラーヴを再現した木造の小屋

ゆたかな自然に囲まれた北欧フィンランドを訪れたログハウス・ビルダーの野田さん。ある日、森の中で目にしたのはハイカーたちが自由に使う休憩小屋「ラーヴ」だった。ちいさな丸太小屋のような愛らしい存在に心を引かれた野田さんが、帰国後に早速試作をはじめたのが、振り返れば小屋づくりの第一歩となった。

北欧フィンランドで愛されるラーヴを再現した木造の小屋

出入口は正面に設けられた2枚の観音扉。焚き火をする際は90度の位置で固定して使用する。

北欧フィンランドの森の中にはユニークな公共設備がある。夏のハイキングコース、冬のクロスカントリーコースなどのルート上に、誰もが自由に利用できるちいさな木造の休憩小屋「LAAVU(以下ラーヴ)」が点在しているのだ。

大人がひとり、またはふたり程度が座れるスペースに炉を組み合わせたこの設備は、森の中で火を焚き、疲れを癒し、食事を楽しむための場所としてハイカーたちが利用するもの。天候が急変した時には一時的に避難するシェルターとしても頼りにされる存在だ。

北欧フィンランドで愛されるラーヴを再現した木造の小屋

屋根は厚さ10cmほど土を盛った草屋根。断熱効果が高く、夏・冬でも室内の温度を快適に保ってくれる。

京都を拠点にするログハウスビルダー「アトリエ・山林舎」代表の野田さんが製作するちいさな小屋は、そんなラーヴをモチーフにしたものである。

休日に滞在するリラックススペースとして、隣県である滋賀県の山中に250坪の土地を借り、野山に囲まれた自然の中に、野田さんのラーヴは建築されている。

北欧フィンランドで愛されるラーヴを再現した木造の小屋

写真は最初に製作したラーヴ。寝転がるにはやや狭かったため、現在は物置として使用中。

公道との境に設けられたウッドフェンスと一体化させたその小屋は、大人ひとりが横になれる幅2m×奥行1.2mほどのスペースに木製の扉を設けただけというシンプルな構造。観音開きの扉はアウトドア用品の収納棚を兼ねており、ちょうどいい高さでしつらえた床に腰を架け、目の前にオーストラリア製の薪ストーブを置けば、ゆったりと火を囲むプライベートスペースとなる。

ちなみに扉を開け放ったまま使用することは無く、たいていの場合は小屋に対して90 度に固定し、風避けとして利用すると同時に、扉へ収納された道具類に手が届くような位置で使用するそうだ。

北欧フィンランドで愛されるラーヴを再現した木造の小屋

室内高は約1.4m。立つことはできないが、横になるには十分なスペース。

扉を閉めると換気口だけの密閉された空間になるが、内部にはセミダブルベッド一台分程度の広さがあり、大人ひとりで就寝するには十分。夜が更けたらオイルランプの灯りの下で読書をしながら過ごすという。

野田さんは10年近く前、フィンランドへ旅行に行った際にこうしたラーヴの存在を知り、いつか日本でも作ってみたいと考えてきたそうだ。最初は小さなサイズで試作してみたが、寝るにはちょっと狭すぎたことからサイズを拡大、2つめのラーヴとして完成したのが写真のものだ。

北欧フィンランドで愛されるラーヴを再現した木造の小屋

基礎は束石、その上に2×4構造の躯体を固定している。天然羊毛を使った断熱材など、スペックは一般住宅並み。

建築にあたっては木の家の専門家らしく、各所に独自のこだわりも落とし込んだ。躯体はSPFや檜、パイン材などを組み合わせた2×4 工法で建築。断熱材には羊毛とポリプロピレンを混紡したサーモウールを使用し、屋根は手入れの不要なありのままの自然の姿を意識した草屋根とするなど、暑さ・寒さにも対応する本格的なスペックとしている。

ログハウス・ビルダーが週末の拠点として製作したちいさな木造の小屋。それは遠くフィンランドで愛されるラーヴをさらに進化させた独自のもの。現在はさらにサイズアップさせた本格的な滞在用の拠点も計画中というから、ますます今後が楽しみになる。

TINY HOUSE DATA
建物名 オリジナルタイニーハウス
製作 アトリエ・山林舎(さんりんしゃ)
問い合わせ先 http://www.sanrinsha.biz
外寸 W2392×D1482×H2150mm/td>
内寸 W2161×D1251×H1400mm
床面積 3.1㎡(約1.87帖)
基礎 独立基礎(束石)
断熱材 あり(サーモウール+スタイロフォーム)
工期 14日(現場工期)
建築費 非公開

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2022
SOURCE|小屋 ちいさな家の豊かな暮らし Vol.6

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