家具や照明に合わせて建築された、時が経つほどに味わいを深める家

アトリエ・キーメン

琵琶湖の東部に位置する滋賀県東近江市。その閑静な住宅街の一角に建つのが「アトリエ・キーメン(Atelier Key-Men)」代表を務めるMさんのお住まいだ。間もなく築20年を迎えるというお住まいには、ハンドメイドで生み出された銅製の照明類が飾られ、アンディークやヴィンテージの家具類が美しく配置されている。若き日に自らデザインをしたという、そんなM邸を訪ねた。

ヴィンテージスタイルの家

30帖ほどのリビング&ダイニングは全面にメキシコ製のタイルを敷いている。家具はイギリスやアジアのアンティークが中心。天井は5メートルほどある吹き抜け造になっており、明るく開放的。

結婚して、子供が生まれ、その子供たちが成長していく過程で、手狭になったことからマイホームを手にする。そんなごくごく一般的な建築プロセスとはまったくの正反対。滋賀県・東近江市に建つM邸は、18歳でマイホームの建築を決意し、23歳で結婚するのと同時に竣工させたという、ちょっと変わった時系列で建築されている。

室内には家具や食器などのヴィンテージ・コレクションが飾られているが、じつはこれらもプロセスが逆。先に購入した家具や食器に合わせて、間取りやサイズなどを調整した上で建築されたという。

デザインそのものも、じつは若き日の施主が自ら線を引いて完成させたそうだ。なにもかも、一般的な常識とはかけ離れた手法で完成された家である。じつは、施主のMさんは銅を素材にさまざまな照明を生み出す照明アーティスト。

今では照明制作の延長として、店舗デザインなどの設計までプロデュースしており、まさに住まいと照明のスペシャリストとして活躍している。とはいえ、前述したように成人する前には、すでに家を建てることを計画していたというのには、やはり誰もが驚かされる。

リビング

ゴロっと横になれるスペースが欲しかったということで、リビングの一部は小上がりにして、床も板張りに変更。

2002年に完成したというその住まいは、111坪という大きな敷地に建つ大屋根造りの3SLDK。木造軸組工法で建築されており、室内は30帖もある大きな吹き抜けのリビング&ダイニングを中心に、1階に主寝室、2階に子供たちの個室が配置されている。

床は全面にメキシコ製のタイルを敷き詰め、天井には床材用の杉板を張ることで断熱性を高めるなど、見た目だけでなく快適性にも配慮されているのが特徴だ。

家の完成よりも先に集め始めたという家具は、イギリスやアジアを中心にしながらも、さまざまな国や地域で愛されてきたヴィンテージやアンティークばかり。ミックスカルチャーながらも、長い時を刻んできたという意味では同じ空気感に包まれている。

主寝室

主寝室はアジアンテイストでまとめられている。天蓋付きのベッドも特品。

こうした家具類は新築の家にはうまくマッチさせるのが難しい。そこでM邸は当初から「10~15年後にやっとしっくりくるような家」というコンセプトで建築されている。築19年を経た現在は、まさに想像した通りの風合いに仕上がりつつある。住まいのディテールは経年変化によって落ち着いた色合いへと変化し、古びた家具ともよく馴染んでいる。

「情報に左右されず、ジャンルに捕われないようにしながら、自分の目を信じて本当にいいものを選ぶようにしている」というMさん。住まいの中には、そんなMさんが生み出した、まるで芸術作品のような照明器具も数多く使用されている。銅を素材にした照明もまた、時を経るごとに魅力を増していく素晴らしい作品ばかりだ。

CONTACT_Atelier Key-Men
WEB_http://key-men.net
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2021
SOURCE|Cal HOME & INTERIOR Vol.3


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