Urban Military Style / Cal vol.20

軍ルーツのタフさを取り入れた
Urban Military Style

定番のファッションスタイルとして根強い人気を誇るミリタリー。そのラギッドなファッション性もさることながら、その真価は軍用というルーツに基づく確かな品質にあり、今のような寒い季節ほどその高い耐久性と耐候性は重宝する。今回は、ミリタリーブランドの中でも機能性とクオリティの高さから、米軍への豊富な供給実績を持つ『アルファ インダストリーズ』を中心に、ルックスだけで終わらない、ルーツを押さえた大人なミリタリー・スタイルをお届けしよう。

 英国の『モッズ』に始まったカジュアルファッションとしてのミリタリーだが、その後の大衆へのプロモーターとして大きな役割を果たしたものの一つに映画が挙げられる。1963 年公開の『大脱走』に登場したA-2を皮切りに 、82 年公開の『ランボ ー』ではスタローン演じるベトナム帰還兵がM-65を着用するなど、ビジュアルとして大きなインパクトを残す作品は多々ある。
 とりわけ、その影響が大きかったのが‘76 年公開の『タクシードライバー』だろう。ベトナム戦後のアメリカ社会において、ロバート・デ・ニーロ演じる主人公トラヴィスが、孤独と狂気に苛まれる様子を描いた名作で、カスタムしたタンカースジャケットやM-65を纏う姿は、社会におけるアウトロースタイルを見事に描いていた。自作したハンドガンスライド装置を袖口に忍ばせるシーンを覚えている人も多いと思うが、あれは袖幅の広い M-65 だからこそ成せる技だった。そして、日本では『 トップガン』(1986年)が、カジュアルファッションとしてのミリタリーウエアの地位を確固たるものにした。G-1を着た型破りなエリートパイロット、マーベリック(トム・クルーズ)の姿からアメリカのダイナミズムの洗礼を受けた方々も多いだろう。いわゆるアメカジとカテゴライズされるアイテムには”必要で生み出された”というルーツがある。たとえばジーンズのルーツは作業着だし、現在のスタンダードとなっているアイテムは全て、使用される環境のニーズに応えて発展した背景を持っている。ミリタリーアイテムはその最たる例で、極限の環境で使用されるものだからこそ、削ぎ落としたその機能美は時代を経ても色あせない魅力を持っているのだ。
 一時期のヴィンテージやレプリカブームが最盛を過ぎた現在、少し穿った見方かもしれないが、それに成り代わるかのように似て非なるアイテムが安価で販売され、それらとクオリティに大差の無いアイテムがブランド知名度のみで高価な値札を下げている、といったことも多々ある。けれども、例えば貴方のクローゼットにあるジャケットの原型がN-1だったり B-15だということ、そしてそれが多様なカルチャーを巻き込んで発展していったものであることを知れば、改めてそれらを着こなす楽しみも増えるだろうし、ファッションを通して時代背景やカルチャーを知るきっかけとなる。様々な事物のルーツが薄まりつつある現在だからこそ、ミリタリーウエアは時代のニーズに合わせた変化を遂げながらも、普遍的な魅力を放つのかもしれない。

Photo|Kousuke ARAI
Text|Kazunari HAYAKAWA
Special Thanks|ALPHA INDUSTRIES
SOURCE|Cal Vol.20


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