モッズカルチャーを愛するスタイリストのヴィンテージ・ライフ|Long Beach, California

’50年代アメリカを象徴する平屋のシングルハウスに日本庭園。そしてファッションでは’60年代英国のモッズカルチャーを愛するスタイリストのポール。根底にクラシックカルチャーへのリスペクトを持つ彼のライフスタイルは、国や文化、時代の垣根をまたぎながらも、淀みなく洗練されたものだった。

ロングビーチにある、カリフォルニアの著名建築家クリフ・メイが建てたカリフォルニア・ランチ様式の1軒の邸宅。1930年代に確立されたそのスタイルは、温暖な気候のこの土地ならではの屋内外が一体化したような造りが特徴で、まさに“クラッシック・カリフォルニア”の言葉を表す景観だ。それだけでもカリフォルニア・カルチャーの歴史を感じる素敵な建物だが、さらにポール・デイが住むこの家には、彼のハイセンスな感性が注ぎ込まれた、唯一無二なスタイルを築き上げている。

ゲートをくぐってまず目につくのが、庭にある日本の茶室を模したオブジェと、日本の“蔵”風にリビルトされたガレージだ。和のテイストは部屋の中まで続いており、木工家具作家ジョージナカシマやプロダクトデザイナー柳宗理が手掛けたイスやテーブルも置かれている。さらに奥には和箪笥の姿も見える。一方で、そのすぐそばにはジョージ・ネルソンが作ったソファやオブジェが置かれ、奥にはフランス製のアンティークソファも鎮座する。ルーツを知るとバラバラに聞こえる組み合わせだが、実際に彼の部屋にいると、不思議にもアンバランスさは一切感じず、むしろ調和のとれた空間にも思える。

きっとそれも、ポール自身が目利きした“本物の良質なヴィンテージ”に統一されているからなのだろう。そんな研ぎ澄まされた感性の持ち主であるポールは、カリフォルニアで女性ファッション誌などを中心に活躍する著名なスタイリストだ。「無理なデザインを施していないナチュラルなアイテムを選んでいるから、文化がミックスしていてもマッチするんだ」という彼の言葉には、なるほどさすが一流のスタイリストであることを実感させられる。

邸宅同様にポールのこだわりを強く表しているのが、彼の持つクルマとバイクだ。自宅前の通りには、1955年式のダッジ・ジョブレイテッドが停まっており、その後ろにはシャスタの1963 年式トラベル・トレーラー。そしてガレージの前には、3台のカスタムされたクラシック・ベスパと1969年式のトライアンフ、さらに高年式のポルシェ・ケイマンとカイエンも置かれている。

インテリアと同じくポールの所有するクルマやバイクは、どれも様々なブランドが混在する。そんな彼が愛してやまないのは、イギリスで’60年代中ごろにかけて流行したストリートカルチャー『モッズ』だ。’50年代後半に芽生え、独特のスーツやヘアスタイルでR&Bなどのブラックミュージックに傾倒するそのスタイルは、当時の英国において一大ムーブメントとなり、センセーショナルな存在となった。一方で、商業的な性質を嫌う彼らのカルチャーに対する想いの“純度”は高く、ポールのカルチャーをミックスしつつも一本筋を通すライフスタイルに通ずるものがあるのだろう。ちなみに3台のベスパは、いずれもモッドの象徴的なカスタムが施されている。

そんなポールにクルマに対する想いを聞くと、「やっぱり機能性で高年式車はドイツ。で、トラックはアメリカ、バイクはイギリス、スクーターはイタリアだね」。日本車だったら何を選ぶ?という質問に、目を輝かせながら「ダットサン・フェアレディだね」。じつに彼らしいセンスを感じる応えだった。

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|SHUN AIHARA
PUBLISHED|2017
SOURCE|Cal #19


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