ファッションデザイナーのクラシックモダン・ライフ|San Juan Capistrano, California

カリフォルニア州内最古の教会が残るサン・ファン・カピストラーノ。マットはこの地で、ヴィンテージ・デニムのブランドを立ち上げた。古き良きアメリカ文化を、デニム素材を通じて発信し続ける彼の家もまた、レッドウッドという古の素材が支えるクラシックモダンなスタイルだった。

ヒスパニック・カルチャーを感じる街並みに薫る海風。そんな爽やかな空気の中に、綺麗な白の外壁がスタイリッシュなマットの家がある。極めてモダンな作りながら、実は1957 年築とちょうど半世紀を経た住宅。家を案内してくれたマットは、開口一番「このレッドウッドが特徴なんだ。家の価格の多くはこのレッドウッドの分だよ」と梁を指差しながら説明してくれた。

レッドウッドは北米原産の針葉樹で、優れた防虫・防火・防腐性を誇る木材だ。特にここカリフォルニアでは古くから住宅用建材として親しまれてきた。ところが、現在では保護の観点から希少性が増し、高樹齢の木から切り出された高品質な木材は貴重なものとなってしまった。そんなレッドウッドが半世紀を超えてオリジナルの姿を残すのが彼の家の特徴だ。

しかも、その室内は古臭さをまったく感じさせず、明るくモダンなスタイルで仕立てられていた。「古い物がそのままタイムカプセルみたいになるのが嫌なんだ。時代ごとの良さをミックスし、今にフィットした形にしたい」というコンセプト通り、建材もアンティーク家具も改装した内装も、高い次元でおしゃれに融合している。

家主であるマットの仕事は、4 年前に兄弟で立ち上げたファッションブランド『フリーノートクロス』のデザイナー。元々サーフアパレルブランド『ボルコム』でデザイナーを務めていた彼は、より一層、アメリカン・カルチャーに強く紐づいたプロダクトを発信したいとの想いで独立。

現在はこだわり抜いたヴィンテージ素材のデニムを中心にメンズファッションを手掛けている。彼が、そんな自身が魅了された古いスタイルのアメリカを“遺産”という言葉で表現していたのがなんとも印象的だった。家でも仕事でも、そのルーツに強いこだわりを持つマット。自身の家と同様に1930 ~50 年代の家が立ち並ぶこの街も彼のお気に入りだが、そのルーツもしっかり抑えているようで、半世紀前のサン・ファン・カピストラーノの写真を広げながら、「これがこの家だよ」と誇らしげに話してくれた。

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|SHUN AIHARA
PUBLISHED|2017
SOURCE|Cal #19


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