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恋を演出する大人の距離感

「新聞ってなぜこの大きさだか分かる?」

そんなナゾナゾを出したのは、ぼくの記憶が正しければ、エッセイストの落合恵子さんだった。

確かに、広げて読むには持ちにくいし、電車の中でバサバサとページをめくるのにも不便だ。

落合さんの答えはこうだった。

「ベッドの中で、ふたりで読むのにちょうどいいから」 夜をともに過ごしたふたりが、朝刊の端を片方ずつ持つ。新聞を広げた距離は大人だけが知る微妙な距離だ。まだ高校生だったぼくは、もちろんそんな経験があるはずもなく、みるみる想像力を働かせてドキマギするばかりだった……。

ビートルの運転席と助手席の間にも、新聞の幅と同じ不思議な距離感がある。並んで座ると、相手の存在が伝わってくる“近い”距離。しかし、お互いの鼓動が少し速くなっても悟られるほど“近すぎ”はしない。しかも、ベンチシートのように寄り添うことは許されない。なんとも歯がゆい恋の距離。

映画「アニー・ホール」では、ダイアン・キートン演じるアニーが、ひと目惚れの相手(ウディ・アレン)を自分のビートルの助手席に乗せたはいいが、ドキドキするあまりニューヨークの街を暴走してしまうシーンが描かれる。あれはまさにビートルの距離感が演出した悪戯だ。ほかのクルマでは絶対にあり得ない。

今回の撮影車両は、FLAT4が仕上げたコンディション抜群の‘78年型グローリー・ビートル。“グローリー・ビートル”とは、当時のトップグレード。その証であるレッドチェックのシートがなんともキュートだ。 

FLAT4広報担当の川崎さんが運転するビートルの助手席に乗りこむと、そこにぽっと不思議な距離感が生まれた。もちろん、(断じて)それは恋ではないが、なんとも人を幸せにする魔法の距離なのである。

[ INFORMATION ]
SHOP:FLAT4
Address:東京都目黒区鷹番1-1-5
Phone:03-3792-7151
URL:https://www.flat4.co.jp/

PHOTOGRAPHS|ISAO TANII
TEXT|SHINTARO MAKINO
SOURCE|Cal Magazine #06

※編集部注:本記事はCal #06に掲載された記事を一部抜粋したものです。


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